『あいたい あいたい あいうえお』【今日の絵本だより 第256回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『あいたい あいたい あいうえお』
聞かせ屋。けいたろう/文 おくはらゆめ/絵 KADOKAWA 1430円
早いもので、今年もあと20日あまり。
昨年に引き続き、今年も「会いたい人に会えなかった……」という方も、多いかもしれません。
そんなせつない思いにそっと寄り添ってくれる、発売になったばかりの新刊絵本、『あいたい あいたい あいうえお』をご紹介します。
外は雨。
今日も雨。
アナグマちゃんは窓辺であやとりをしながら、
「あのこに あえない あいうえお」。
お部屋の中で、サッカー姿のイッカクサイくんも、
「あのこに あいたい あいうえお」。
パンを焼きながら踊っているウンピョウくんも、縫いものをしているエゾリスばあばも、窓辺にてるてるぼうずを吊るしたオオコノハズクの家族も、みんなみんな、誰かに会うのを心待ちにしているようです。
次の朝は、すっかりまぶしいお天気空!
「あえるぞ あえる あいうえお」
ピカピカのおひさまの光の中、みんな弾むような足取りで山に向かいます。
さあ、みんなが会いたかった相手は誰でしょう?
青空の下、山のてっぺんには晴れやかな笑顔がいっぱい。
うれしい歓声が聞こえてくるようです。
読み聞かせのプロ・聞かせ屋。けいたろうさんのリズミカルな言葉と、明るくのびやかなおくはらゆめさんの絵のコンビネーションで、読みながらこちらも一緒にワクワク。
まだ文字が読めないお子さんにも、「あいうえお」の部分を一緒に言ってもらうと、きっと楽しいですよ。
「あいうえお」って、まるで幸せの呪文みたい。
そんな気持ちになるくらい、会いたい人に会える喜びに満ちている、大切な人への愛しさがあふれている一冊です。
そうそう、見返しにも「なるほど!」なお楽しみがありますよ。
前と後ろを見くらべてみてくださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。