2021年8月15日

『カメレオンのかきごおりや』【今日の絵本だより 第231回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『カメレオンのかきごおりや』【今日の絵本だより 第231回】の画像1『カメレオンのかきごおりや』
谷口智則/作 アリス館 1650円

8月も折り返しですが、もちろんまだまだ、夏まっさかり。
こちらの絵本『カメレオンのかきごおりや』で、ひとときひんやり気分を味わうのはいかがでしょうか。

ぼくは、旅するかきごおり屋のカメレオン。
お店の自慢は、世界中で集めた、色とりどりのシロップです。
今日のお客さまのサルくんは、なんだか元気がないみたい。
「そうなんだ。ちょっと おちこんでて…」
それを聞いたぼくのおすすめは、黄色いシロップのかきごおり。
「レモンにバナナ、はちみつを つかった ”たいようかきごおり”を
 めしあがれ」
一口食べたサルくんは、飛び上がって
「うわー! なんか げんきに なった」

 夏バテ中のシロクマくんには、青い”うみかぜかきごおり”。
寝不足のコアラさんには、紫の”よあけかきごおり”。
他にもまだまだ、お客さまの悩みにあわせて用意されるオリジナルのかきごおりは、まるでおいしい魔法のお薬みたい。
色鮮やかなかきごおりのおかげで、お客さまはみーんないい笑顔。
でも、こんなにたくさんのお客さまを幸せにしていながらも、ぼくの心の中には、消えない悩みがあったのです。

黄色に青、紫に赤に緑。
どんな色にも染まることのできるカメレオン。
自由なようでいて、だからこそせつないことがある。
「ぼくって いったい なにいろなんだい?」
自問自答を繰り返し、ひとつの答えを見つけたぼくが、最後に読者に出してくれるかきごおり。
これには思わず「わあっ!」と声が上がりそう。
今は普通に楽しく読んで、いつか子どもたちが大きくなってから、「あ、そういうことだったのか」と、カメレオンのぼくのメッセージを思い出すかもしれない。
そんな予感を含んだお話です。

次回も、冷たくておいしいものの絵本をご紹介します。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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