2021年7月16日

お菓子のようなワクワク感、青森県の「せんべい汁」【おうちでカンタン!郷土ごはん・3】

子育て中は台所仕事がままならないことって、たくさんありますよね。おいしくて栄養のあるものを食べさせてあげたいけれど、とにかく料理する時間がない! レパートリーもマンネリ化! そんなときのお助けメニューにできる“郷土料理”を、さまざまな地域で育ったママたちに教えていただきました。

お菓子なの……?! クセになる味
青森県・せんべい汁(せんべいじる)

おつゆの中に入れるものとして、青森では普通に売られているという「せんべい」。野菜たっぷりの鍋の中にせんべいを入れて煮込んだ「せんべい汁」は、お菓子を入れたようなワクワク感が楽しめます。
「せんべい汁のせんべいは独特な硬さで、他にはない味。アンテナショップやインターネットでも手に入れることができるので、ぜひ食べてみてください。子どもたちはせんべいを手で割って入れるお手伝いが大好きなんですよ」

今回、郷土ごはんを紹介してくれたのは……
太宰美緒 さん
だざいみお/俳優・モデル。4歳・3歳・1歳の3人の娘と青森県出身のパートナーの5人家族。代表作に「魔女の宅急便」(清水崇監督)「わたしは光をにぎっている」(中川龍太郎監督)がある。

歌まである! せんべい汁は八戸の食文化

青森県・八戸で育ったパートナーとはじめて青森を訪れたときに、せんべい汁を食べたという太宰さん。お鍋の締めにせんべいを入れることに衝撃を受けたそうです。

「そのとき夫に、給食にもよく出るメニューなんだと聞きました。レストランや食堂、飲み屋街などでも見かけますし、せんべいのお土産もたくさん売っているんですよ。カップ麺のように、お湯を入れて食べられる即席せんべい汁もあります。ちなみに八食センターという八戸の市場では、せんべい汁の歌がエンドレスに流れているんですよ!  具だくさんで野菜がたっぷりとれるので、これだけでお腹いっぱいになり、おかずが何品も作れないときによく作ります」

そば打ちやお料理が得意なパートナーのおばあちゃまに習い、青森に行くとお料理をたくさんする機会があるそう。こんなふうに子どもたちに郷土の味が受け継がれていくんですね。

1歳の娘さんもせんべい汁が大好き。せんべいが入っていると、おもしろがって食が進むというのも、ママには本当にありがたいところ。

 雪深い青森県だからこそのあったかメニュー

太宰さんのお義父さまが撮った青森の風景は、一面の雪。夏でも東から湿った冷たい風が流れてくる八戸では、夏がとても短く、温暖化と言われている現在でも7月の平均気温が23度と、過ごしやすい場所なんです。

「そのぶん冬は長くて寒く、夫はスケート大会や『えんぶり』という八戸の春を告げるお祭りで、熱々のせんべい汁を食べた思い出があると言っていました。子どものころは、3mもの大きなお鍋で2500人前のせんべい汁を作るイベントもあったそう。寒い地方ならではのお料理ですよね。暑い季節は冷たい食べ物が多くなり、クーラーでも身体を冷やしがちなので、コトコトと煮込んだせんべい汁が胃腸を温めてくれますよ」

はじめて食べてもホッとするおだしの旨味
せんべい汁の作り方

材料(4人分)
鶏肉……200g

ゴボウ……1本
にんじん……1/2本
長ネギ……1本
しいたけ……3個
しらたき……1/2袋
せんべい……4枚 

だし汁……800cc
醤油……大さじ3
酒……1/4カップ
塩……少々

使う「せんべい」とはこれ! 青森のおばあちゃまが送ってくださいました。南部煎餅に近いのかな……? と思っていたら、まったくの別物! 手で割るのに力をかけなくてはならないほど硬く、このままでは食べられません。

作り方

1.鶏肉は一口大に切る。ゴボウはささがきに、にんじんは短冊切り、長ネギは斜め切りにしてしいたけは薄く切っておく。
2.だし汁と、ゴボウ、にんじん、しいたけを土鍋に入れ、アクを取りながら中火で煮込む。

3.下茹でしたしらたきと鶏肉を入れて火が通ったら、長ネギを入れる。

4.せんべいを一口大に割って入れる。

ポイントは、せんべいを4〜5分煮たらすぐに食べはじめること。せんべいがどんどん柔らかくなっていくので、食べるタイミングで入れましょう。

「野菜は千切りにして冷凍しておくと、すぐ煮込みはじめられるので便利ですよ。お鍋ひとつでごはんが完結するので、洗い物も少なくてとっても楽です」

試食メモ

とにかくせんべいを割るのが楽しい! 子どもたちは作っているところに寄ってきて「何これ? おせんべい入れるの!?」と、興味津々。柔らかく煮込んだおせんべいがおだしを吸ってくれているので、食べるたび、じゅわ〜っとおいしさが。小さい子向けにはくたくたに煮るのがよいけれど、ちょっと食感を残して硬めに仕上げるのもオススメ。腹持ちがよく、せんべいだけでもお腹いっぱいになるので、離乳食にもよさそう。お鍋の食材はあるものでもよく、また、おせんべいをお味噌汁やお吸い物に入れてみてもいいですよね。

クーラーで身体が冷え気味の季節に、お鍋でどーんと食べられる温かいものが新陳代謝を上げてくれそう。太宰さんのおばあちゃまは、おだしと鶏肉の代わりに、サバ缶と酒と醤油で味つけすることもあるそう。これならさらに簡単に作れそうですよね。

吉川愛歩
よしかわあゆみ/食のライター・料理家
13歳と5歳の母。暮らしと食のコンテンツ制作に携わり、執筆と料理の仕事をしている。『メスティンBOOK』(山と渓谷社)や『キャンプでしたい100のこと』(西東社)などのレシピ監修も行っている。
https://www.instagram.com/yoshikawaayumi/

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