ドイツではチョコレート入り!?ところ変われば離乳食も変わる【教えて!世界の子育て~ドイツ~】
海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。
場所や文化が違うと、子育ては違うのでしょうか。日本での子育てや生活と同じこと、違うこと。各国からリアルな声を伝えてもらいます。
ところ変われば離乳食も変わる。ドイツで子育てをする中原さんが、ドイツの離乳食について伝えてくれます。チョコレート入りの離乳食やお米の上にジャム!? ドイツと日本の離乳食の違いとは。中原さんと義父とのやり取りにも注目です!
とにかく楽にいこう
ドイツの離乳食
授乳! うんち! 着替え! おひるね! おむつ! 授乳! おひるね! 授乳! うんち! うんち! 家事! という目の回るルーティーンの中にいると、気付かぬ間に乳児期は恐ろしい早さで過ぎ去っていきます。
「じゃ、そろそろ離乳食始めてくださいね。瓶詰めをうまく利用して色々試していってください」と、小児科の先生から健診で言われ「も、もう離乳なの……?」と落ちくぼんだ眼窩(がんか)を見開いたあのときの私は、長女のリンゼが4か月の頃だったか。まだまだ赤ちゃんだけど、きたる離乳に備え、少しずつ口を慣らしていく必要があるのですね。
日本だと6か月ころからスタートで、薄く、味もほとんどつけていないお粥から始める場合がほとんどだと思います。
初めての育児で初めての離乳食も、外国にいると情報は電話とインターネットが命綱!「おっかあ! 離乳食って何使うの!?」と、日本の母に電話して色々と聞きつつ、日本から離乳食の本も取り寄せて、少しずつ準備を始めました。
初めて口にするご飯の味をパクパク食べる子もいればそうでない子もいます。
うちもリンゼの時は口に運んでも運んでもべぇーーと出してしまい、なかなか進みませんでした。「ま、でもミルクはちゃん飲んでるし、栄養が足りてないわけじゃないからいいや」「今日は私が疲れてるから離乳食はちょっとだけね!」と、ゆっくりと進める戦法を取っていました。
そんなある日、ドイツ人義父がやってきてこういう言葉を投げつけてきました。
「なぜコメなど食わせとるんや! コメだからアカンのや!」
な、何ですって……! コメだろうが石だろうが食べないものは食べないのです。リンゼはミルク以外の知らない味を覚えている真っ最中。口から出してしまうのも当然! カチンときて言い返してしまいました。
中原「何を言うとるんや、一番最初は米に決まっとろう!」
すると義父の目尻が釣り上がります。
義父「赤子の最初はニンジンじゃ!」
中原「ニンジンはセカンドステップじゃ!」
義父「りんごをすりおろして食わせんのか!」
中原「食わせんわ! まずは加熱した物からじゃ!」
義父「ニンジン食わせんと丈夫にならんぞ! 小鍋で煮て潰すんや!」
中原「知っとるわ! ニンジンさんは来月ご登場の予定でございますぅぅ!!」
今思えば、義父は自分の育児の思い出を不器用ながら語りたかっただけなのかもしれません。しかしそれを優し~く聞く余裕が、私にはありませんでした。
そのときの私は張り詰めていたし、毎日の家事育児にもゲッソリ疲れていました。
ああ、ほんとうに離乳食の、この毎食ごとっていうのが地味に辛い。機嫌によって食べたり食べなかったり、ひっくり返って泣いたり、撒き散らして泣いたり、お粥を顔に塗りたくって泣いたり。それに付き合うのも体力を使うし、毎食毎食ベトベトになるテーブルと椅子と床とリンゼを拭き、着替えさせるまでがセット!
離乳食の献立ってそれらの苦労を少しでも緩和するための段取りじゃないですか。それを横からケチつけられると腹も立つというものです。
ところ変われば
離乳食も変わる
それでもドイツの文化的な物があるのかな? と義母に聞くと、確かにニンジンやジャガイモから始めるのだといいます。「でも何でもいいと思う~。ミルク以外の味をリンゼが口にできればいいんだから手に入りやすくて楽なのが一番。ビンにすればいいじゃない、瓶詰め!」
はっ! そういえば小児科の先生も「瓶詰めを利用して」って言ってたな!
スーパーの棚を見に行ってみると、あるわあるわ。たくさんありすぎてどれを選んだらいいのか分からんぞ。瓶をよく見ると……ああ、4か月用って書いてある! 4か月用のは鶏肉ペースト、ほうれん草とじゃがいも、にんじん、かぼちゃ。他にもインスタントの粉を溶かす系は、Hirsebrei(キビ粥)、Kartoffelbrei(マッシュポテト)、Getreidebrei(雑穀粥)の素などがあり、これなら更に楽できそう! と、粉も瓶もたんまり買って帰りました。
瓶詰め離乳食の味をみてみると、4か月のものは食材の味のみ。5~6か月のものからうすく味がついてきて8か月になるとじゃがいものグラーシュやパスタのトマトソースなど、調味料が使われる大人のメニューに近づいていきます。
6か月用の、牛乳で溶く系のお粥は、やけに食いつきがいいな〜と思って味見してみたら、「なんじゃこりゃ!」びっくりするほど甘くって、なんと小さなチョコレートも入っていて(!!!)即やめ。
当たり外れが大きいから表示確認と味見は必須です……。
そんなわけで私はお粥をベースに、瓶詰めの色々な野菜や肉を足していくスタイルにしました。ニンジンのペーストも買ったから義父から文句を言われる筋合いもないもんね!
お米って、アジア人にとっては主食だけれどドイツ人にとっては数ある穀物のうちの一つにすぎません。私たちがよく食べるジャポニカ米は、ジャスミンライスやアマランサス、キビやカラス麦などと一緒に並んでスーパーで売られていますが、どんなパッケージだと思いますか?
じゃん! コメの上にジャムが鎮座しておる。名称もMilchreisミルヒライス。直訳で牛乳米。
お米を水と牛乳で煮て、甘味として食べるんですね。こうやってジャムやフルーツのコンポートを載せていただきます。これが作ってみるとお米がちょっとアルデンテ。美味しいんですが炊飯器の無い家庭でわざわざお粥を作るならニンジンやジャガイモを細かく切って煮た方が早い。
お米の調理って、私たちアジア人は炊飯器も持っているし慣れているけれどドイツ人にとっては日常食ではありませんから、お米を柔らかくするのは手間の掛かることの様に見えるのかもしれません。
マシーンでもっと
楽しなさい!
ドイツの住居は割とキッチン面積が大きく、収納もたくさんあります。
しかしその分、機能が重複した電化製品を「え、それ要る?」ってくらい複数所有しがち。わかる、わかるよ。場所があればあるだけ物が増えるの!
例えば、ブレンダーが一本で済むところを、ポタージュマシーン、総合クッキングマシーン、スムージーマシーン、ミキサー全部持ってたりする。何かっていうとすぐマシーン。さすが工業製品の国!
そんなんですからもちろんあります離乳食マシーン。材料をセットしてスイッチを入れるだけで、加熱して月齢に合わせた食感にしてくれる優れものです。
ご近所ママからは「中原さんあなた毎食ライスを煮てるんですって〜偉いわね〜! マシーンはこんなに楽よ! あなたもマシーンでもっと楽しなさい!」とむっちゃお勧めされました。(残念、うちのキッチンは狭い)
そうやってお助け器具を使うことで新鮮な野菜を手軽に食べさせてあげられるという利点もあります。
「ご飯の内容は何であれ、ぼくは自分の手から食べ物をあげる最初の喜びが離乳食だったから、とにかく嬉しかったし感動したな~」と夫はのんびり言います。
リンゼは哺乳瓶が嫌いだったので腕に抱いてミルクや白湯をあげるチャンスが夫には無かったんですよね。
離乳食にはたくさんのドラマがあります。手間や忙しさや無力感に振り回され何が何だか分からないまま過ぎ去る離乳食期。洗濯機の中でぐるぐる回されている洗濯物の気分はこんな感じに違いない。