『きんぴらきょうだい』【今日の絵本だより 第209回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『きんぴらきょうだい』
苅田澄子/文 大島妙子/絵 講談社 1540円
5月10日は、ごぼうの日。
新ごぼうがおいしいこの時季に、ごぼうとにんじんのコンビが主役の絵本、『きんぴらきょうだい』はいかがでしょうか。
ごぼうとにんじんは、大の仲良し。
にんじんはごぼうを「にいさん」、ごぼうはにんじんを「いもうと」と呼び合って、
「にいさん、あたし、
はやく きんぴらに なりたくって しょうがないわ」
「おう、すぐに なれるさ、いもうとよ」
と、ふたりで粋な着物に身を包み、流しの歌手のいでたちで旅立ちます。
「ごぼごぼ にんにん ごぼごぼ にんにん。」
最初にやってきたのは、犬のマリーさんの家。
「あっしらを きんぴらに してくだせえ!」
「あたしたち きんぴらに なりたくってよ!」
そう頼んでみますが、フランス料理派のマリーさんには、すげなく断られてしまいます。
そのあとどこのおうちに行っても、きんぴらにしてもらえないふたり。
「♪きんぴら~ きんぴら~ ああ きんぴら~
こんなに きんぴらに なりたいのに
どうして どうして なれないの?」
深い悲しみを広場で歌っていたら、突然現れたきつねに、にんじんがさらわれてしまって……。
歌あり、スリルあり、そしてハッピーエンドありの『きんぴらきょうだい』は、「食べるのだいすき よみきかせ絵本」シリーズ(講談社)の1冊。
納豆やお米やじゃがいもなど、滋味ある素材がテーマのシリーズです。
『きんぴらきょうだい』を一度読んだら、「ごぼごぼ にんにん ごぼごぼ にんにん」が頭から離れずに、お店で思わずごぼうとにんじんを手に取ってしまいそう。
そうしたらぜひ皆さんのおうちで、おいしいきんぴらにしてあげてくださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。