2021年4月9日

『ピーマンのにくづめだったもののはなし』【今日の絵本だより 第202回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ピーマンのにくづめだったもののはなし』【今日の絵本だより 第202回】の画像1『ピーマンのにくづめだったもののはなし』
若井麻奈美/作 アリス館 1430円

ご存知ですか?
4月9日は、「よいPマンの日」。
ピーマンの出荷量が増える4月に、「よい(4)P(9)マン」の語呂合わせから、ピーマン主産地JAグループの「がんばる国産ピーマン」プロジェクトが定めた記念日だそうです。
ピーマンの絵本と言えば、4月19日の食育の日にちなんで『やさいのがっこう ピーマンくんゆめをみる』をご紹介したことがありますが、今回はこれまた個性際立つピーマンが主人公の一冊、『ピーマンのにくづめだったもののはなし』をご紹介します。

青い帽子をかぶったピーマンのにくづめは、お届け物を運ぶ仕事にいそしむ働き者。
「ふー、いそがしい いそがしい」
たくさんの荷物を抱えて走っていたら、
「がっつん!」
石ころにつまずいて転んでしまい、なんとその拍子に、おなかのおにくが飛び出してしまいました。
ピーマンからはずれたおにくは、飛び出した先で
「わー! ぼく、
 うまれて はじめて
 じぶんの あしで
 たってるぞ!」
立ち上がってうれしくて走り回って、ピーマンのおなかには戻ってくれません。

仕方なくそのまま配達の仕事を続ける、ピーマンのにくづめ(だったもの)ですが、突然からっぽになったおなかがすーすーして、なんだか不安です。
お届け先で見つけたなっとう、わたがし、いくら、別の食べ物をおなかに詰めてみますが、そのたびに相手に怒られてしまいます。
すると、荷物の箱の中で一部始終を聞いていた小さなカラフルチョコが、ピーマンのにくづめ(だったもの)に、意外なアドバイスをくれました……。

自分の姿形が、ある日大きく変わってしまったら。
とぼけたお話のようですが、これはお子さんが初めて出会うアイデンティティ絵本になるのかも。
頭と心が柔らかい内に、親子で読みたい一冊です。
後ろの見返しには「ピーマンのにくづめの つくりかた」つきですよ!

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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