2021年1月11日

『おもちのきもち』【今日の絵本だより 第182回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『おもちのきもち』【今日の絵本だより 第182回】の画像1『おもちのきもち』
かがくいひろし/作 講談社 本体1500円+税

1月11日は、鏡開き。
関西などの地域ではもう少し先、15日か20日に行う場合もあるようですね。
今回は鏡開きにちなんで、なんとかがみもちが主人公のこの一冊、『おもちのきもち』をご紹介します。

表紙から何やら困り顔で、腕組みしているかがみもち。
たごさくさんちのかがみもちです。
おもちつきで生まれた時から、きねとうすでペッタンペッタン、何度も頭を叩かれて。
きょうだいたちはのし棒でのばされたり、小さくちぎられたり、それはもう散々な目に。
その上、あんこやきなこをつけられて、はたまた納豆でねばねばになって、ペロリと食べられてしまうのです。
かがみもちだって、今はこうして大事に床の間に飾られていますが、
「いつ なんどき たべられる ことやら。
 ああ おそろしや。」

そこで、かがみもちは心を決めました。
「この たび にげだす ことに
 いたしました〜。」
さあ、床の間から家の外へ抜け出して、おもちは全力疾走。
どうやって?
それはもう、ぜひ絵本をご覧ください。
ペッタンペッタン、ビロンビロンビローン。
擬音も走る姿も、なんとも愉快で大笑い。
この絵本を一度読めばもう、かがみもちを見る目が変わっちゃいますよ。
鏡開きの前にはきっと、「あんなふうに逃げちゃうかな?」と、思い出し笑い。

『おもちのきもち』は、『だるまさんが』(ブロンズ新社)などで大人気のかがくいひろしさんが、50歳の時のデビュー作です。
長い間、特別支援学校の先生をしていたかがくいさん。
どの作品にも、子どもたちを喜ばせたい、笑顔になってほしいという思いがあふれているようで、笑った後にはほっこりと、温かい気持ちが残るのです。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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