『たべもののたび』【今日の絵本だより 第175回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『たべもののたび』
かこさとし/作 童心社 本体1300円+税
12月11日は、「いに(12)いい(11)」で胃腸の日。
胃腸の絵本といえば、もちろんこちらですよね。
1976年初版のロングセラー、『たべもののたび』をご紹介します。
「あなたは ごはんを たべますか。
それとも パンですか。
おさかなは すきですか。
おにくは どうですか。」
かこさとしさんの絵本ではおなじみの、子どもたちにひとつひとつ、やさしく語りかける言葉。
にこにこ顔の食べものがたくさん、その食べものの栄養は、手にした黄色いカバンの形で描かれています。
「さあ、その カバンを もって
たべものたちが これから
からだの なかの たびに でかけます。」
旅の一番初めは、お口のももいろトンネル。
むしゃむしゃむしゃ、ぱくぱくぱく。
それから、喉の奥の狭い道を進んで、いぶくろこうえんへ。
ここではまわりから、食べものをとかす不思議な薬の噴水が、しゅっしゅっと出ています。
いぶくろこうえんで薬の噴水をあびて、おかゆのようになった食べものたちは、今度はしょうちょうこうえんへ。
ジェット・コースターで、下がったり上がったり、曲がったり回ったり。
そうしている内にみんな目を回して、黄色いカバンは手から離れてしまいます。
「栄養素」や「胃液」、「消化」という言葉を使わずに、それでも人体の消化のプロセスを、こんなにわかりやすく伝えてくれる物語。
自分も大好きなお話ですが、「そうか、大人の言葉で言えば、消化の仕組か……」と、案外最近になってから驚きました。
「消化」という言葉の前に、自分の頭の中では「たべもののたび」として、しっかりと頭にインプットされているようで。
『たべもののたび』を含む 「かこさとし からだの本」シリーズは、全10冊。
あのダークヒーローが主役の『むしばミュータンスのぼうけん』も、このシリーズの一冊です。(しびれますね! )
毎日使っているのに、実は詳しく知らない、自分の体のこと。
シリーズで読んだらぐっと身近に思えて、そして「体ってすごいなあ」と、自分の体ながら感心すること間違いなし。
大人にも改めて「なるほど!」がいっぱいの内容です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。