ハザードマップのここを見て!水害から身を守るためにチェックしておくポイントとは
2020年9月28日

ハザードマップのここを見て!水害から身を守るためにチェックしておくポイントとは

災害時の報道で耳にする「ハザードマップ」。皆さんは自分の住む地域のハザードマップを見たことはありますか?
災害後、実際に被害があった区域とハザードマップの被害想定区域を照らし合わせると重なることも多く、ハザードマップの重要性はさらに増しています。
アウトドア防災ガイドのあんどうりすさんは「子育て世代こそ、ハザードマップを見て欲しい」と話します。その理由とは? 災害時に備えてチェックしたい情報をお伝えします。

ハザードマップってナニ?

ハザードマップとは、地震や洪水などの自然災害による被害を、できるだけ小さくすることや防災対策に使用する目的で作られており、被災がおよぶ想定区域や避難場所、避難経路、危険な場所などを表示した地図のことをいいます。
地震や洪水など災害によりそれぞれ異なり、各自治体で作成しているため、見た目や内容にはそれぞれに違いがあります。

「ハザードマップは自分や家族のいる場所が危険かどうかを知る大切な手段です。見たことがないという人もまだまだ多いのが現状。何が書かれているのか、なぜ見て欲しいのかをぜひ知って欲しいです」(あんどうりすさん)

ハザードマップを
LINEから取得!

「ハザードマップを取得する方法は、自治体のウェブサイトなどを検索する他に、ママ達におすすめしたいのがLINEで『内閣府防災』とお友達になる方法です。」とあんどうさんが教えてくれたのは、2020年9月にスタートしたLINE公式アカウント「内閣府防災」です。

取得方法は、LINE公式アカウント「内閣府防災」のQRコードを読み取る方法(※1)、または「LINE ID:@bosai」を検索して「内閣府防災」を友達追加。
LINEからの操作で、「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2種類のハザードマップを確認することができる他、「自宅外への避難の必要性」や「避難のタイミングについて」など「避難行動判定フローを確認する」ことができ、避難についてのアドバイスが表示されます。

重ねるハザードマップ
確認したい地域の地図上に、洪水や土砂災害、津波、道路防災情報などの複数の災害リスクを重ねて表示できる。さらに市区町村の境界に関係なく広範囲が表示されるので、地域の災害リスクを俯瞰的に確認することができる。

わがまちハザードマップ
その名の通り、市区町村が作成している、地域の災害リスクについての詳細な情報が確認できる。

 

ハザードマップには
何が書いてある?

「保護者の方にはまず、水害に関するハザードマップを見て欲しいと思います(自治体により『洪水ハザードマップ』『水害ハザードマップ』『浸水ハザードマップ』などの名称で掲載)。
水害に関するハザードマップには、洪水や内水氾濫のときにどの地域で浸水するかという『浸水想定区域』が赤や青などの色別に表示されています。ただ、色だけを見ていても、いつその状態になるのかが分からなければ避難にはつながりません。
そのハザードマップが何を意味しているかを知ることが、いつ避難すべきなのかの判断につながっていくのです。(ただし、中小河川や小規模河川、用水路などについてはハザードマップに反映されていない場合もあり、色がついていない=安全とは言えないため注意が必要です)」

では、いつ避難すべきかの判断は、何を見れば良いのでしょうか?

避難はいつする?
「想定最大規模降雨」をチェック!

よく「1000年に一度の大雨」などと報道されることがありますが、そう言われても、実際にどのくらいの雨量なのか、避難するべきなのかさえ分かりづらいかもしれません。
そこで見て欲しいのが「想定最大規模降雨」です。
これは、想定できる最大規模の雨量が数値で表されており、発生する確率は小さいですが、大きな規模の降雨であることを示しています。例えば、「1000年に一度」は、1年間で発生する確率が1000分の1(0.1%)以下、「100年に一度」は100分の1の降雨を表します。

ハザードマップのここを見て!水害から身を守るためにチェックしておくポイントとはの画像1

「『100年に1度の雨』が、どのくらいの雨の量かピンとこないと思いますが、ハザードマップには具体的な数字が書かれている場合があります。小さな字ばかりが書かれた部分を探してみると見つけやすいかもしれません。
たとえば『想定最大規模雨量400mm』と書かれているとします。これは、積算雨量が400mmになると地図上に示された範囲が浸水するということを表します。
豪雨や台風の際、ニュースやネットの情報にはこの積算雨量が報道されます。積算雨量が想定最大規模雨量に近づくと、ハザードマップの浸水想定の通りになる可能性があると思ってください。
つまり、とにかくそうなる前に避難が必要だということです。

また、浸水区域内には「立ち退き避難」が必要な場所があります。立ち退き避難とは、避難場所や安全な場所への移動が必要な避難のこと。たとえば、堤防が壊れて河川の外に流れ出る水の勢いが強くなったり、河岸に浸食が起こるため家屋が流失する危険がある場所は立ち退き避難が必要です。そのような場所にある木造家屋だと、2階に避難するだけでは助からないこともあるため、早めの避難が必要とされています。

自宅付近のハザードマップの想定最大規模雨量が何mmなのかを把握し、『自分がいる場所は危険か』、もし危険な場所ならば、『雨量がどのくらいになったら避難をするか』などを事前に決めておくことは重要です。その際は、同じくハザードマップを見て、危険箇所を避け、安全な避難ルートや避難場所を決めておくことも事前に行いたいですね」

首都圏・都市部は
「内水氾濫」に注意!

「そしてもうひとつ注意したいのが『内水氾濫』です。
首都圏や都市部で多く起こる内水氾濫とは、短期間に雨がたくさん降ることで、市街地の排水処理能力を超えてしまい、建物や道路が水に浸かってしまうことを言います。周辺に河川はなくても、低い土地やゼロメートル以下の土地、まわりよりくぼんでいて昔は沼だった地域などは注意してください。

問題は、内水氾濫がハザードマップに反映されていない地域が多いこと。『マップ上では浸水予想区域ではない』『地図上で白く表示されている』などが、全て安心・安全ではないことを覚えておいてください。

内水氾濫の場合は、1時間あたりの雨の量を目安にします。
目安にするのは『1時間に50mm』の雨量です。都市部の内水氾濫では、おおむね50mmを超えると浸水が始まる恐れがあるとされています」

お相撲さんが
降ってくる!?

「ところで、この『1時間に◯mmの雨』というのは、イメージしづらくないですか?
たとえば『1時間に100mmの雨』とは『1時間に100mm=10cmの深さの水がたまる』ことを意味します。これは、1m四方に100kgの雨が1時間に1回降るということと同じ。
100kgというと、小さめのお相撲さんひとり分相当だと考えると、1m四方に1時間に1回100kgの小さめのお相撲さんが降ってくるというイメージです! イメージすることで、危険だということを感じていただけましたか?」

ハザードマップのここを見て!水害から身を守るためにチェックしておくポイントとはの画像2

江戸川みんなの防災プロジェクト「どうする? 水害から命を守る行動」より引用(※2)

「内水氾濫は洪水と違い、流れがない場合があります。そのため、冠水していても水の中を歩くことができると思われがちですが、実はその中には汚物がたくさんでとても不衛生! また、階段や坂道、側溝などでの速い流れによって足をすくわれることもありとても危険です。
冠水したら、水の中には入らない! と決めて、浸水する前の早めの避難、または、上層階への避難を検討してください」

いつ避難を
すれば良い?

警戒レベル3は
乳幼児がいる家庭も避難対象

「水害や土砂災害の防災情報はさまざまで、結局いつ避難すれば良いのか分からなくなる人もいるかもしれません。その場合はまず、市町村が発令する「警戒レベル情報」を目安にして欲しいと思います。警戒レベルは5段階あり、レベル4は全員避難、レベル5はすでに災害が発生している状況です。

小さな子どもがいるなど避難に時間がかかる場合は『レベル3』での避難が推奨されています。

ハザードマップを見て危険だとされる場所に住んでいるならば、浸水していない段階で避難をすると決めておくことが必要です。どの段階で避難するかということを事前に決めておくことは、実際の災害時に慌てず行動できることにも繋がるからです。

過去の例を見ると、水害の警戒レベル4が発令されてわずか4分で堤防が決壊したということもありました。子ども連れの避難は警戒レベル3での避難が安全でしょう。
ちなみに『1時間に30mm』の雨は、まるでバケツをひっくり返したような雨で、道路は川のようになり、前が見えず行動が難しい状態になります。20mm以上になると傘をさしていても濡れるのが一般的、10mm以上では地面からの跳ね返りで足元が濡れたり、地面一面に水たまりができるため、子どもを連れての避難はこの『1時間に10mm』の雨でも難しく感じます。

早めの避難を決断する理由は、雨が激しくなると避難することができなくなってしまうから。これらの数値は意識しておきたいですね。

ただし、警戒レベル3での避難にはデメリットもあります。それは、警戒レベル3が出されている時点では雨が降っていなかったり、まだ川の水位も上昇していないため避難するには大げさに思えてしまうことです。また、実際には予測からはずれて、大きな被害にならずに済むこともあります。
ただ、繰り返しになりますが、ハザードマップで現在地が危険な場所かどうかを知ること、危険な場所にいるということが分かっているのならば、早い段階で避難すると決めて行動することはとても重要です」

ハザードマップのここを見て!水害から身を守るためにチェックしておくポイントとはの画像3

江戸川みんなの防災プロジェクト「どうする? 水害から命を守る行動」より引用(※2)

ハザードマップから
読み取れないこととは?

「計画規模」の降雨は
注意が必要!

「ハザードマップは、自治体によって異なると述べましたが、2015年の水防法改正以前のマップの場合、想定最大規模の雨量が掲載されていないところもあります。たとえば『計画規模』と表示される降雨では、10~100年に1回ほどの大雨の規模を想定されているため、想定最大規模降雨よりも数字が低めに書かれています。
計画規模を基準に作成されたハザードマップ上で、自宅周辺が浸水想定区域に入っていないからといって油断するのは非常に危険です。冒頭に紹介した『重ねるハザードマップ(国土交通省)』で自宅の住所を検索することで想定最大規模のハザードマップを取得できる場合もあるので、ぜひチェックすることをおすすめします」

バックウォーター現象に注意!

「大きな河川と中小河川がぶつかる場所では、各地で被害をもたらしている『バックウォーター現象』が起こることがあります。
バックウォーター現象とは、大雨などで増水した大きな河川の流れで中小河川がせき止められ、逆流したり、水位が急激に上がり、中小河川の上流側で堤防が決壊したりすることです。

ハザードマップにはバックウォーター現象による浸水想定区域や危険箇所が掲載されていないことも多いため、中小河川と大きな河川の合流部周辺は特に注意し、逆流や決壊などで浸水の可能性がある場所は、早めの避難が必要かもしれないと意識しておくことが大切です」

台風のときにも
ハザードマップ!

台風の場合は進路の情報や天気予報で被害の予想がつきやすいものです。それらの情報とハザードマップから、自分のいる場所が危険な場合は、避難を「いつ」「どこに」するかを決めておきましょう。

「たとえば、東京都の江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)では、大規模な水害が迫っているときには3日前から5区以外の場所へ避難を促す『広域避難』が発令されます。5区の大半がゼロメートル地帯に位置するので、洪水や高潮によってほとんどの場所で浸水が起こると予想されているためです。
水害が起こった場合、水位が高い所ではマンションの4階ほどの浸水の可能性があり、2週間は水が引かないという予想がされています」

河川水位情報をチェック!

大雨や台風の際、河川のようすを見に行き、被害に遭われることがあります。自宅近くの河川が気になるのはもっともですが、注意したいのは、「どこで雨が降っているか」「どこが決壊するか」です。

「河川が氾濫した場合、どこで氾濫が起こっているかによって、浸水する範囲や程度は変わります。
実は、その重要なポイントは、自宅近くの河川の『上流の河川』なのです。上流の地域でどれだけ雨が降っているのかを知ることで、“今後の”自宅近くの河川の状況がわかります。

これは、Yahoo!天気・災害の『河川水位情報(※3)』で情報を取得することができます。また、河川水位情報に掲載されていない中小河川などの場合は、気象庁の『洪水警報の危険度分布(※4)』をチェックしてください。洪水警報などが発表されたときにどこで危険度が高まるかがわかります。
目の前の川を見に行くのは危険です。上流の河川の様子をまず把握することをおすすめします」

今いる場所が危険かどうかを知ることは、その場所から避難すべきかどうかを判断することができます。
自宅や通園・通学先、勤務先のハザードマップには、何が書かれていて何が書かれていないのかを知り、「いつ」「どこが」危なくなるのか予想をつけること。そしてそれを避難の時には役立てられるよう、ぜひ事前にハザードマップをチェックしてください!

【出典】

※1 http://www.bousai.go.jp/pdf/line.pdf LINE公式アカウント「内閣府防災」プレスリリース 

※2 http://edomb.wp.xdomain.jp/program/manga 江戸川みんなの防災プロジェクト「どうする? 水害から命を守る行動」

※3 https://typhoon.yahoo.co.jp/weather/river Yahoo!天気・災害「河川水位情報」

※4 https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/flood.html 気象庁ホームページ「洪水警報の危険度分布」

ハザードマップのここを見て!水害から身を守るためにチェックしておくポイントとはの画像4教えてくれたのは
あんどうりすさん
あんどうりす/アウトドア防災ガイド リスク対策.com名誉顧問
阪神淡路大震災の経験とアウトドアスキルを使った日常にも役立つ防災テクを、赤ちゃん子育て仲間に話したのが2003年。技だけなく仕組みと知恵が得られると好評で、口コミで全国に広がる。現在、企業研修など多様な講演、FM西東京パーソナリティ、リスク対策.comなど防災記事も執筆。ゆるくて楽しい防災が好み。
Facebook:https://www.facebook.com/andorisu

Photo by Adobe Stock

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