2020年5月10日

『ようこそ! ティールームことりへ』【今日の絵本だより 第127回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ようこそ! ティールームことりへ』【今日の絵本だより 第127回】の画像1『ようこそ! ティールームことりへ』
どいかや/文 伊藤夏紀/絵 アリス館 本体1400円+税

日に日に木々の緑が増え、鳥のさえずりもにぎやかになってくるこの季節。
5月10日〜16日の一週間は、愛鳥週間です。
愛鳥週間のスタートに、鳥が主役のこちらの絵本、『ようこそ! ティールームことりへ』はいかがでしょうか。

はっぱもりの、大きなさくらの木の上にある、「ティールームことり」。
看板娘は、頭のリボンがかわいいヤマガラのカーラ。
カーラのおじいさんとおばあさんが若い頃、渡り鳥たちの休憩にと、桜の葉っぱのお茶「チェリーリーフティー」をふるまっていたのが、このお店の始まりです。
小さかった息子も大きくなってお嫁さんをもらい、メニューも増えて、今では渡り鳥にも森のみんなにも人気になったお店を、孫のカーラもあわせて三世代で切り盛りしています。
お客さんに「おいしいね」って喜んでもらえるのが、何よりうれしいカーラ。
でも最近、自分でも新しいメニューを考えてみたくなりました。
さくらんぼがたくさん実る季節に、カーラは「そうだ!」とひらめきます。

家族のつながり、心躍るおいしそうなメニュー、長く愛されるものの魅力と、新しいことへの挑戦。
愛らしい空気の中にいろんなテーマがつまっている、懐かしさと新しさの同居するお話です。
そうそう、「ティールームことり」に集う森のお客さんたちも、鳥だけではなくて、チョウやリスや、モグラやテントウムシや……、他にもたくさん。
こんなにいろんな生きものたちが、テーブルを囲んでゆっくりとお茶を楽しんでいる様子、なんだか小さな楽園のようです。
(そしてみんな、さりげなくおしゃれなんですよ!)

ヤマガラってどんな鳥だっけ、とネット検索してみたら、なるほど、この鳴き声はどこかで聞いたことがあるような……。
そしてヤマガラの写真を目にして、カーラの家族みんなおそろいのエプロンに「ああ、なるほど!」とうれしくなりました。
思い立ったら調べられる便利な世の中、ちょっとしたことで、物語の世界がぐんと近くなるものですね。
遠くまでバードウオッチングに出かけるのはまだ難しそうですが、今週はご近所から聞こえてくる鳥の声に、耳を澄ませてみようと思います。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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