9月のテーマ「月の絵本」【広松由希子の今月の絵本・11】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます！

9月のテーマは「月の絵本」

夜風が涼しく、月のきれいな季節になりました。
小さい子たちも、お月さまは大好きですね。
特にまんまる満月は、親しい人のように感じているみたい。

月の見えない晩も、
お月さまの絵本は、いつもそばにあります。

『おやすみなさい おつきさま』は、1947年生まれ。
世界中の幼子たちの枕元で、
子守唄のように読み聞かせられてきた絵本です。

「おおきな　みどりのおへやのなかに
　でんわが　ひとつ
　あかい　ふうせん　ひとつ
　えの　がくが　ふたつーー」

ベッドに入った子うさぎといっしょに、
部屋にある物をひとつずつ目で確認し、
ひとつずつに「おやすみ」を告げます。

窓には、ゆっくり昇る満月が。

「おやすみ　おへや
　おやすみ　おつきさま」

元気いっぱいの時間ではなく、
ベッドタイムがやっぱり最適。
静かに、安心の眠りに導いてくれます。

『おやすみなさい おつきさま』
マーガレット・ワイズ・ブラウン／作
クレメント・ハード／絵　せたていじ／訳
評論社　定価1260円　1979

お月さまがいつも丸いわけじゃないって
気づいたのは、いくつのとき？

『おつきさま こっちむいて』では、
男の子が空に浮かぶ月を見つけて、話しかけます。
毎日いろんな時間に、いろんな場所で、形のちがうお月さまに向かって。

「ほそい　ほそい　おつきさま、
　こっちむいて。
　おなかが　すいてるの？
　ぼくと　おんなじだね」

「ねえねえ　おつきさま。
　どうして　ずーっと、
　ぼくのあとを　ついてくるの？」

そう。お月さまは、夜だけでなく昼間も出てる。
眠たそうなおぼろ月や、
まばゆくぴかぴかの半月のときもある。
そうしてだんだん太っていくと……？

詩人と画家のやわらかな感性が
たくさんの気づきをくれます。

『おつきさま こっちむいて』
片山令子／文　片山健／絵
福音館書店　定価840円　2010

月光は人を狂わすといいますが、
もやもやする月夜には、
『つきよのかいじゅう』で
ハメをはずすのも、また一興。

湖のほとりにテントがひとつ。
ひとりの男が伝説のかいじゅうを見るために、
ずっと待ち構えておりました。
そしてある満月の晩、ついに出たのです！

ネッシーの首のようなシルエットに
胸を高鳴らせ、夢中でシャッターを切っていると、

「わーっ、これは　なんだろう？」

青く幻想的に浮かぶシルエットが、
と、と、とんでもないものに？？？

「ボコボコ　ボコボコ
　ボコボコ　ボン」

長さんお得意の、月夜のナンセンス。
『つきよ』（教育画劇）や『つきよのキャベツくん』（文研出版）も、
おかしくなりたい晩におすすめです。

『つきよのかいじゅう』
長新太／作
佼成出版社　定価1427円　1990

おしまいに、これこれ。
泣く子も黙る（ホント！）赤ちゃん絵本の定番
『おつきさま こんばんは』を。

自宅で赤ちゃん文庫を開いた最初の日、
美術館のイベントで一歳児がこぞって泣き出した日、
……公私共々、この本に何度助けられたことか！

絵本と出会ったばかりの子どもが
ゆるやかな物語に吸いついてくる、その豊かな表情の変化。
赤ちゃんと絵本を読む楽しさを
わたしに最初に教えてくれたのも、この本でした。

「まんまる　おつきさま
　こんばんは　こんばんは」

お月さまの笑顔が、赤ちゃんにうつり、
赤ちゃんの笑顔が、読んでいる大人にもうつります。

『おつきさま こんばんは』
林明子／作
福音館書店　定価735円　1986

月光は、人を若返らせるともいいますね。
子どもと楽しむ月絵本で、
ぴかぴかのぷりぷりになっちゃいましょう♪