『くるみのなかには』【今日の絵本だより 第78回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『くるみのなかには』
たかおゆうこ/作 講談社 本体1400円+税
9月30日は、くるみの日。
「く(9)るみ(3)はまるい(0)」の語呂合わせからなのだそうです。(かわいい!)
この日に何よりおすすめの、素敵なくるみの絵本がありますよ。
『くるみのなかには』。
「くるみのなかには なにがある?」
もし、りすがかくしたくるみなら、それはりすの裁縫箱。
小さな針刺しと小さなはさみ、ボタンに糸巻き、大事なお道具がしまってある。
くるみをよく見て、もし、小さなドアがついてたら、それは小さな小さなおじいさんと、小さな小さなおばあさんの暮らす家。
ほら、ろうそくを灯して、お茶のテーブルを囲んでいる。
くるみを耳に当ててみて、もし、「カラーン カラーン……」とかすかに音が聞こえたら……。
くるみの中に広がる、いくつもの、果てしない世界。
一編の美しい詩のような、外国の短編映画のような、でもやっぱり、これはまぎれもなく絵本。
絵本ならではのリズムと、余白と、いつまでも響く余韻。
この一冊を読んだ後、本物のくるみを手に取ったら、静かに胸が高鳴りそうな気がします。
お子さんならきっと、小さいドアがついていないか探したり、耳に当ててみるのでは。(大人でもやってみたい!)
ときどき「本は好きでも、ファンタジーは苦手」という方がいますが、幼い頃にこんな絵本に出会い、その世界で自由に遊べたら、大人になってもずっとファンタジーと仲よくいられると思うのです。
想像力は、心の中を、自分の世界を、無限に広げてくれる。
それは大人が子どもに手渡すことのできる、プレゼントのひとつかもしれません。
いつまでも心のすみに置いておける、壊れることのないプレゼント。
ただ今、神奈川・横須賀の絵本専門店&カフェ「うみべのえほんやツバメ号」2階「うみべのギャラリー」にて、10月29日(火)まで、たかおゆうこ絵本原画展『くるみのなかには』が開催中。
くるみの中にある素敵な世界を、ぜひ間近でご覧ください。
【NEW!】
静岡・三島の絵本専門店「えほんやさん」にて
11月22日(金)〜12月18日(水)
『くるみのなかには』(たかおゆうこ)原画展開催
11月24日(日)
たかおゆうこさんのトークイベント&サイン会
★14時~15時半 トークイベント
定員20名、要予約
参加費一般2000円、高校生以下1500円、ドリンク付
★15時半~ サイン会(予約不要)
トークイベントのお申し込みはこちら
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。