子どもの間違いは訂正しない。本人に気づかせる方法とは?【ノンちゃん先生の「おうちでモンテッソーリ」・9】
モンテッソーリ教育を日米の保育現場で実践してきた小原希美さん(ノンちゃん先生)が、子育てに役立つモンテッソーリ的考え方をわかりやすくご紹介。子どもとの向き合い方がぐっとラクになります♪
「いち、にぃ、さん、ご!」は間違いだけど、間違ってない!
お風呂から上がる時などに「あと10数えたら上がろう!」なんて、親子で数を数えることってありますよね。小さなお子さんでも意外と1〜5くらいまで、年齢によっては1〜10まで簡単に言えてしまいますが、数字を飛ばしたり順番を間違えてしまうこともよくあります。そんな時、皆さんはどうしていますか? ついつい、「違うよ! 3の次は4だよ。」と訂正していませんか?
モンテッソーリ教育では、子どもの間違いを大人が直接訂正することはありません。皆さんも子どもの頃、そろそろ片付けしようかなと思っていた矢先に「片付けなさい」と言われてイヤな気持ちになったことはありませんか? 大人の言葉は子どもにとっては想像以上に強い存在なので、直接訂正するのは極力避けたいところです。言葉で直接訂正せずに対処するには、どうすればよいのでしょうか?
言葉で訂正しなくても子どもに伝わる工夫
モンテッソーリ教育で構築する環境の中では、子どもが誤った使い方をしたときに子ども自身で気づくことができるような工夫がされています。
例えば、玄関で靴を脱ぐ時、大人は両方の靴をピタッと揃えて並べられますが、それは大人には「揃えて並べる」という概念ができ上がっているから。その概念が育っていない子どもには最初から揃えられるわけがありませんから、揃えて並べるんだということを知らせていかなければいけません。しかし、それを言葉で伝えようとすると、毎回大人が関与しなくてはならず、自分から自発的に行うというよりも大人に言われたからやるという結果になりがちです。このように、大人が注意して行動を起こさせるとき、その行動の主(責任)は本人ではなく大人側になってしまいます。
逆に子ども自身から靴を揃えて脱ぎたくなるように、靴を脱ぐ環境(玄関)の中に「自分で気づける手がかり」を用意してあげましょう。例えば、筆者が講師をつとめる『はじめの親子教室』では、靴形にくり抜いたステッカーを玄関の床に貼っています。なぜなら0〜3歳の時期は「同じ」を見つけて合わせることが気持ち良いと感じるので、子ども自らがそこにピッタリと揃えようとするからです。こうすることで、この時期ならではの子どもの感受性を活かして、揃えて並べることを自然と身につけていくことができるようになります。最初のうちは単に靴形にピッタリと合わせることに興味があってやるのですが、続けることで徐々に揃えるという概念に変わっていくことでしょう。
ここまでをご理解いただいた上で、冒頭にあった数を数える時の子どもの間違いについても見ていきましょう。
数の概念については、モンテッソーリ教育では、数量、数字(書く文字)、数詞(言葉で述べる時の音)の3つが一致する事で数を知ったことになります。つまり、口で1〜100までの数字を言えたとしても、数量の概念が伴っていない場合は数の概念を習得した事にはなりません。
このような数の概念を身につけ始めるのは3歳以降とされています。ですので、この時期は間違えるのはむしろ自然な姿なのです。
とはいえ、3歳未満のお子さんに数の体験を全く与えないというわけではなく、1〜5、1〜10ぐらいまでの数を日常生活の中で楽しんで取り入れるとよいでしょう。たとえば「ザルの中にみかんが何個入っているか数えてみよう!」とか、「4人家族分の食器を並べてみよう!」といった具合に、教え込もうというスタンスではなく、日常生活の中で数字と親しむ環境を楽しみながら取り入れてあげましょう。そうすることで、3歳以降にその子が知的分野に目覚めた際、よりスムーズに深くその興味を追求していくことができるでしょう。
撮影/花田梢
※今回で「おうちでモンテッソーリ」は最終回、次回からは読者のみなさんのお悩みにモンテッソーリの視点でお答えする企画がスタートします。どうぞお楽しみに!
小原希美(おばら・のぞみ)
幼稚園教諭としてモンテッソーリ教育と出会い、専門知識を深めるために単身渡米。創設者マリア・モンテッソーリの流れを汲む本場の専門教育を受け、教師資格を取得。その後も米国内にて3年間乳幼児施設に勤務し、経験を積む。15年間の教諭・保育士経験で延べ2,000名以上の子どもたちと関わる。 恵比寿にある『はじめの親子教室』ではモンテッソーリ教育をご家庭でも手軽に取り入れられるよう工夫した独自メソッドにて日々指導にあたっている。
はじめの親子教室 https://hajimenooyako.com/
Instagram @hajimenooyako