『チリとチリリ うみのおはなし』【今日の絵本だより 第62回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『チリとチリリ うみのおはなし』
どいかや／作 アリス館 本体1200円＋税
7月14日は、ゼリーの日。
翌日7月15日は、海の日。
そうなると、今読むのにぴったりの絵本はこちらですね。
『チリとチリリ うみのおはなし』。
チリチリリ、チリチリリと、自転車でおでかけするチリとチリリ。
偶然見つけた洞窟に、「いってみようか」「そうだね」と、ライトをつけて暗い中を走って行くと……。
あっ。
明るく開けたそこは、青い海の中でした。
自転車のままでチリチリリ、と珊瑚の迷路をぬけていくと、見つけたのは「Sea Parlor」。
中では色とりどりの魚たちが、いろいろな貝がらのソファーでくつろぎ、お茶を楽しんでいます。
チリはまきがいのソファー、チリリはしんじゅがいのソファーに座ると、タコのウエイトレスさんが何か運んできてくれました。
チリには「なみの あわパフェ まきがいふう」、チリリには「うみの ソーダゼリー しんじゅクリームのせ」。
食べてみると、あら、中から素敵な宝物が……。
自転車で海の中を進んだり、海の生きものが素敵なおもてなしをしてくれたり。
文字だけで書くと摩訶不思議なことが、絵本では何の違和感もなく、さらっと起こるのです。
それはまさに、絵本の魔法。
サイクリングをごく自然に楽しんでいるチリとチリリが、ごく自然に出会う、たくさんの素敵なこと。
それは案外サプライズなのですが、ふたりがあまりに自然体で受け取るので、読む方も一緒に、素直に幸せな気分が満ちてきます。
魔法は日常とひと続き。
自転車をこいで行ける場所に、新しい出会いは待っている。
色鉛筆で鮮やかに描かれた水中の美しい景色は、何度見てもうっとり。
ふたりが探す「ちょうど ぴったりの たからもの」も、女の子には心躍るキーワードです。
『チリとチリリ うみのおはなし』は、チリとチリリシリーズの第2弾。
これまで6冊が出ている人気シリーズに、この秋、最新刊が登場予定です。
9月9日発売、タイトルは『チリとチリリ あめのひのおはなし』。
チリチリリ、と、どこまでも自転車で行くふたりを、今度はどんな素敵な出会いが待っているのか、楽しみですね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ／フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、ＭＯＥでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。
