『かっぱのこいのぼり』【今日の絵本だより 第48回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『かっぱのこいのぼり』
内田麟太郎/作 山本孝/絵 岩崎書店 1430円
もうすぐ、こどもの日。
わが家にはおひなさま、よろいかぶと、こいのぼりがあるのですが、飾る係としては一番気分が上がるのが、こいのぼり。
一番出し入れが楽というのもあるのですが、こいのぼりを「空に泳がせる」という発想が好きです。
他の節句人形にはない、特別な開放感。
こいのぼりだけがアウトドア。
『かっぱのこいのぼり』は、そんなわくわくがぎゅっとつまった一冊です。
ここは伊予の国、松山はかっぱまち。
路面電車を真ん中にして並ぶ商店街、笑顔で歩く家族連れや学生たち。
ここが水の底ということをのぞけば、私たちとおんなじ暮らし。
行き交うみんなは、どことなくうきうきしている様子です。
「むりもありません。
あしたは、五月の あおぞらよりも、もっと もっと
こころの はれわたる日ですから。」
特別な明日のために、お風呂で体をきれいにするかっぱの家族。
はるばる遠くから、かわうそ一家も訪ねてきました。
さんしょううお、なまずやえび、いろんな水の生きものが集まってきます。
夜が明けて、さあ、いよいよその日になりました。
広場に集まったみんなは、並んでごろりとねころんで……。
私は『かっぱのこいのぼり』を読んでから、「こいのぼり」というとこの本を思い出すようになりました。
それくらい見事な、わあっと息をのむような、クライマックスが待っているのです。
それはもう、こいのぼりってこんなに素晴らしいものだったのかと、ページをめくる手がとまってしまうほど。
ずっと見入ってしまうほど。
ああ、こどもの日は、こんな景色が待っている、かっばまちに行きたいな。
この感動をあなたにも、そしてもちろんこどもたちにも。
ぜひ実物をご覧くださいね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。