
みんな大好き、あの赤ちゃん絵本が生まれるアトリエへ。夢眠ねむさんが、とよたかずひこさんと対談。【夢眠ねむの絵本作家に会いたい!・4】
「これからの本好きを育てる書店」を営む夢眠ねむさんが、憧れの絵本作家さんを訪ねる連載第4回。
今回のゲストは、絵本作家のとよたかずひこさん。
「ももんちゃん」や「おいしいともだち」シリーズなど大人気の絵本の数々は、カラーの原画ではなく、一場面ごとに墨一色で4版描き、印刷用特色インキ4色のパーセンテージを指定してかけ合わせ、色を表現する方法で制作されています。
美大卒の夢眠さんは、目の前で見るその技法にわくわく。盛り上がるアーティストトークを、本誌に続けてweb版で特別公開します。
職人技で仕上げる、美しい色の絵本
夢眠ねむ(以下夢眠) 今回、とよたさんの絵本が色指定の印刷で作られていると知って、本当に驚きました。
当たり前なんですけど、とよたさんのこの字のままで色指定も書かれているのが、本当にかわいい。
とよたかずひこ(以下とよた) 最初はガッシュ(不透明水彩絵具の一種)とかを使って色を塗っていたんだけど、印刷物と原画って落差があって、鮮やかなピンクなんてなかなか出ない。それなら自分の表現したい色が出るようにするには、印刷用特色インキで指定する方法が一番効果的じゃないかと。
これは版画と同じ原理。だけど、印刷では4版しか使えないからね。赤、青、墨、黄の各版のパーセントを、こうやって指定するわけですよ。
夢眠 そうか。印刷の基本の4色なんですね。
とよた そう、4色です。かけ合わせてフルカラーになります。印刷代にそれ以上お金かけられないよね、定価があるんだから。消費税入れて千円以内っていうのが著者としての希望なんですけど、最近の経済状況でなかなか厳しい。
夢眠 そうですね。赤ちゃんの絵本って安いと助かるからなあ。なめるし、かじるし、ちぎれるし。
本体900円、消費税込で990円が、私もお店でおすすめしやすいです、ママたちに。「990円なんですよ、これ、こんなに面白いのに」って。
でも私、勝手に「とよたカラー」みたいな特色インクがあって、データで指定されてるんだって思ってました。
とよた 本当はデータが使えれば一番いいんだけど、この通りアナログだ(苦笑)。
夢眠 私、やりましょうか、アシスタント(笑)。
とよたさんの絵本、「なんでこんなにきれいに色が塗れるんだろう?」って思ってました。
墨一色で4版分描くときに、もう自分の手の圧だけで濃淡、データでいうところのパーセントを調節してるってことですよね。
とよた そう。塗り方によって強弱をつけるのね。
夢眠 すごいなあ。それは6B(鉛筆)みたいな色で描くんですか。
とよた これこれ。ダーマトグラフ(ガラスや金属にも描ける特殊芯の色鉛筆)。
夢眠 ああ~。懐かしい。芯が短くなったら糸を引いて、クルクルクル~ッと芯のまわりの紙をはがすんですよね。これで本番の絵を描いていらっしゃる。
でも、主線は違いますよね。筆ペンですか?
とよた 普通のデザイン筆だよ。これは天祥堂のやつ。
夢眠 うわ~っ、懐かしい。私も美大受験のときに使いました。
絵本作家デビュー、太鼓判!?
とよた ねむさんは美大に行っていて、絵本は多分身近にあったと思うんだ。意識の中にね。
で、子どもが生まれて我が子に読み聞かせていると、自分で作りたくなりますよ、きっと。
夢眠 今まで「絵本を作りませんか」というお話があっても、ずうっと断っていたんです。やっぱり、絵本が好きだと難しく考えてしまって。どうしても本職の方には敵わないと思っているので、芸能人が出す絵本にちょっと抵抗があるんですよ。「そろそろ芸能人感は抜けてきたかなあ」ってタイミングで、いつか描きたいなあとも思っています。
とよた でも、子育て真っ最中は、楽しいことやたいへんなこともいろいろあるけど、それを丸ごと受けとらねばね。それが創作の肥やしになるんです。今はなかなかまとまった時間ないですよね。
夢眠 ないです。育児中の制作は、私にはとても無理です(笑)!
とよた そう思います。だから一回、間を置いてみることも大事なんです。
今は仕込みの時期なんだと自覚して、そのとき思いついたアイディアも十分熟成させて、時間が経ったら。それは40歳かも、50歳かもしれないけど、その頃にやっと“子ども”を客観的に見られるようになります。
夢眠 我が子に対して描くっていうよりは、子どもたちみんなに描くっていう目線じゃないとですね。
じゃ、もし絵本を描いたときは、絵本にとよたさんから推薦の帯をよろしくお願いします。「この子はいつかやると思っていました」みたいな(笑)。
とよた わかりました! (ライバルになるから)あわてずに、ゆっくりデビューしてください(笑)。