絵本作家・おくはらゆめさんは親子でどんな絵本を読んでいる?【うちの読み聞かせ・13】
気になるあのママ・パパは、絵本をどんなふうに楽しんでいるの? 親子の読み聞かせについてお話をうかがう連載。第13回は、絵本作家のおくはらゆめさん。4歳の男の子のママとして、どんな読み聞かせをされているか、うかがいました。
作り手の「こっそり」に気づいて自分が興奮することも
――おくはらさんは、いつもどんな風に読み聞かせをされていますか?
4歳の息子に「よんで」と言われたら、なるべく読んでいます。 寝る前は必ず読みます。息子と私が好きなのを1冊ずつ。絵本がおやすみスイッチみたいになっています。最近の息子は寝るのが惜しいようで、長〜い絵本を読みたがり、反動で私はものすごく短いのを選びます。昨夜の私は『いろいろ おせわに なりました』(柳生弦一郎 作/福音館書店)を選びました! 短いわらべうたで、読むと気持ちが晴れます。絵もサイコーです。
―― 読み聞かせの絵本を選ぶ基準はありますか?
息子も私も、その時の気分で選んでいると思います。先日、息子が「きょうは、七夕だからこれにしよう」と『ロウソク いっぽん ちょうだいな』(飯野まき 作/福音館書店)という七夕の絵本を選んだので、行事に合わせてくるだなんて、すてきやん!とびっくりしました。
―― 読み聞かせをしていてよかったなと思うこと、発見したことなどあればお聞かせください
何度も同じ絵本を読むのだけど、心から大すきな絵本は、何回読んでも新鮮な気持ちになることが分かりました。そんな絵本が作れたらいいなあと思います。 作り手がこっそり忍ばせていたことに気付いたとき、子どもよりも私が興奮しています(そういう「こっそり」は見返し[表紙の裏側]や表4[裏表紙]に隠されていることが多い気がします!)。
それから、息子が3か月くらいの赤ちゃんだった頃に自分の絵本『しっぽがぴん』(風濤社)を試しに読んでみたら、一生懸命に目で追ったり、にこーっと絵本に笑いかけたりするのを見て、感動しました。いろんな絵本を読み続けていますが、絵本と現実が繋がる時があって、楽しいなあと思います。たとえば、迷路が出てくる絵本を読んだ後に、ラップに包まれたごはんを見た息子が「迷路になってる!」と教えてくれたり。
―― ごはんが迷路なんて、素敵な発見ですね!! では、読み聞かせをすることで、ご自身のお仕事や絵本づくりに影響を与えていることはありますか?
前より、「子どもに伝わりやすい言葉」を意識するようになりました。 あと、絵を描くときに登場人物の目の上などに挿し色として赤やピンクでアイラインみたいのを入れるのが好きなんですが、子どもが「怪我したの?」と言いそうで、最近は仕事の絵の時は控えています。
おくはらさんの思い出の読み聞かせ絵本3冊
――それではここで、思い出の読み聞かせ絵本3冊を教えてください。
赤ちゃんの頃からだと、た〜くさんあるので、4歳になってからの思い出の絵本3冊です。
『なるほど忍者大図鑑』
(ヒサ クニヒコ 絵・文/国土社)
大きくなったら忍者になりたい息子。忍者の格好に着替えてから、この絵本を読んでいました。
この絵本を参考に、様々な武器を作っています。絵本というより、指南書!?
『えらぶえほん』
(ニック・シャラット、ピッパ・グッドハート 著/聞かせ屋。けいたろう 翻訳/講談社)
「いってみたいのはどこ?」「だれとともだちになりたい?」など、絵の中から自分で選んで遊ぶ絵本です。息子は一緒に寝る仲間(ふくろう、犬、恐竜、みかん、てんとう虫、リュック、地球)の分も声色を変えて選ぼうとするので、読むのに大変時間がかかります♡
『ドラゴンをさがしに』
( ロメオ・エーニョ 作/Game Flow )
半分絵本、半分ゲームのような絵本で、主人公のキャラクターを自分で選んでからお話が始まります。ページが上中下に分かれていたり、選択肢によって1ページめくるか、2ページめくるか、変わったりします。「読むたびにお話が変わる」のが面白い絵本なんだと思うのですが、息子はあまり冒険せず、だいたい毎回同じページをたどります。きっと安心するのかもしれません。
―― おくはらさんの絵本も、最近たくさん出版されたようですね。
この春に新刊が3冊出たのですが、この状況でなかなか本屋さんにも並びにくいようで、お知らせさせてください。
『うんめぇめぇし のはらのごはん』(ほるぷ出版)
ふたごのヤギが、野原でおいしいものを見つけて「うんめぇ、うんめぇ」と言いまくるお話です。 巻末に「のはらのごはん」のレシピが付いているので、絵本の中のごはんを、本当に作れます。
『うさぎになったゆめがみたいの』(BL出版)
うさぎになった夢がみたい女の子みーちゃんが、前歯を出して寝るお話です。 きっと寝るのが楽しみになると思います。み〜んな、いい夢見られますように!!!
『きつねのしっぽ』(小峰書店)
全部ひらがなの童話です。しっぽの手入れは1日3回! 自分のしっぽを大切にしているきつねのお話。しっぽをめぐって、いろんなことが起こります。「どうぶつの なおそうとするちからって すごいのよ」。中に出てくる好きなセリフです。
―― コロナウイルスの影響で、書店に行くのも気軽なことではなくなっていますね。いっぽうで、おうちで過ごす時間が増えたことで、読み聞かせをする方も増えているのかなと思いますが、おくはらさんはここ数か月で絵本を読む時間が増えたりなど、変わったなと思うことはありますか?
コロナ生活で、絵本を読む時間が特に増えたり減ったりはなかったのですが、テレビを見る時間は増えました。すっかりテレビっ子になった息子。私も「子ども向けのテレビ番組って面白いなあ」と感じることが多いので、負けずに面白い絵本を作りたいとメラメラしております。
あと、私は「いったい、新型コロナウイルスってなんなんだろう?」と不思議でたまらず、『こどもコロナ新聞』というフリーペーパーを作りました。 子どもの質問「コロナはなんでまるい?」「どのくらいちいさい?」などに対して、サイエンスライターの伊沢尚子さんに答えてもらっています。 子どもに伝えようと、伊沢さんが選ぶ言葉が優しくて、難しい言葉が苦手な大人の方にもおすすめです。 子どもや読者の質問を一緒にひもといていくと、少しずつ元気が出てくる気がします。
『こどもコロナ新聞』https://korosin.amebaownd.com
おくはらゆめ(奥原 夢)
1977年、兵庫県生まれ。辻学園日本調理師専門学校卒業。『ワニばあちゃん』(理論社)でMOE絵本屋さん大賞新人賞、『くさをはむ』(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞、『シルクハットぞくはよなかのいちじにやってくる』(童心社)で日本絵本賞、童話に『わたしといろんなねこ』(あかね書房)で小学館児童出版文化賞を受賞。ほかに『チュンタのあしあと』(あかね書房)『やきいもするぞ』(ゴブリン書房)『みんなのはなび』(岩崎書店)『しっぽがぴん』(風濤社)、童話に『つっきーとカーコのけんか』(佼成出版社)『よるのまんなか』(理論社)などがある。