
意見を交わす必要のない「みんなが同じ」の世界。違いがあるからこそ、自分の意見を伝えるスキルが身に付くのかも【日登美のタベコト in Berlin・102】
ベルリン在住で6人の子どものお母さん。モデルとして活躍する傍ら「台所から子育て、暮らしを豊かに」をコンセプトに、オンライン講座とウェブサイトを主宰している日登美さんによる、「食」からはじまるエッセイです。
それがある、という自然
違いがあるって素晴らしい! と最近そう思います。もちろんその違いこそが問題になることが多々あるのも承知の上で、違うということの良さを感じてきたドイツでの子育てのお話をしようと思います。
そもそも普通って一体なんでしょう? みんなと同じ見かけならそれは普通ってことでしょうか? ベルリンでの子育ては自分は自分、他人は他人で、それぞれの価値を認める。それぞれの自由を尊重するというのが基本です。だから親たちも見かけや職業、夫婦のあり方、家族のあり方なども、とっても自由だと思います(子どもや周りを傷づけないという基本的なことが守られている限り)。
子どものクラスメイトでもそう言えばお母さんが2人いる家庭や、お父さんが2人いる家庭も珍しくありませんし、シングルマザーも少なくないです。ジェンダーについても多様なあり方が当たり前なので「そういえば」と言われなければ、特に気になることもありません。

ブラジル在住時、我が家の庭で遊ぶ子どもたち。みんな違う国籍に年齢。混ざって遊ぶのがまた楽しい!
食卓でも肉食について宗教的な理由で食べない子や、健康上の理由で食べられない子、個人の思想で食べない子、いろいろあるけど、そういう違いが多くあるからこそ、自分の意見、自分のあり方をきちんと人に伝えなくてはならないので、そのスキルが育つし、他人の意見を受け入れる土壌も育っていくように思います。
「みんなが同じ」の中にいる心地よさは、時にその「違い」を必要以上に阻んでしまうこともあるかもしれませんし、意見を交わす必要も生まれないかもしれません。そうなるとますます「違う」ことに敏感になってしまうし、それを排除しようとしてしまうこともあるかもしれません。

多様性と共存するベルリン育ちの上の子たち。違うことで出会った良いこともそうでなかったことも含めて人間性を育ててくてた。
同じように、子育てしていると、親ってどうしても「善」の立場に立ってしまう。そして子どもの失敗やいたずらを「悪」の立場で理解しようとします。けれど大事なのは「それがある、という自然」を理解しようとすることで、決して白黒はっきり決めることだけではないのだと思うのです。
違いがあることが全ていいことにつながるとは言えませんが、私たちに違いがある理由は一体なんでしょう? なぜ私たちはみんな「同じ」じゃないのでしょう? そう考えると、違うことを楽しんでしまう方が理にかなっているように思うのです。
子育てという小さな世界から、地球全体を眺めると、なんだかいろんなことがつながっているように感じます。ごちゃごちゃ混ざって、混沌として、でもそうしながらもなぜか平和と幸せの均衡が保たれていく。自然界と同じように人間もそうであればいいなぁと思うのです。

子育てしていると、子どもたちはもともと分け隔てない心を持っているなぁと、感じる。

日登美/ひとみ
3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。現在はモデルとして活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに、食、暮らしと子育てのワークショップ、オンライン講座などを行う。
台所から子育て、暮らしを豊かに。「Mitte(ミッテ)」
instagram / @hitomihigashi_b
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