
5年生の息子のクラス旅行の持ち物リストにあった「添い寝用の人形」。ドイツの子どもたちにはなぜ人形が必要?【日登美のタベコト in Berlin・95】
ベルリン在住で6人の子どものお母さん。モデルとして活躍する傍ら「台所から子育て、暮らしを豊かに」をコンセプトに、オンライン講座とウェブサイトを主宰している日登美さんによる、「食」からはじまるエッセイです。
お人形と添い寝
5年生の息子が学校のクラス旅行に1週間出かけていきました。基本的にドイツでは、日本の学校みたいに丁寧に持ち物のしおりや旅行の案内資料などは配られません。自分で考えて持っていくっていう感じ。それでも今回は珍しくペラっと1枚だけ持ち物のリストがあったのですが、そこに日本では絶対に記載されていないであろうものがあったんです。それは何かというと、お人形。何のためかっていうと、寝るための人形なんです。
ドイツでは「Kuscheltiere (クッシェルティア)」と呼ばれ、クッシェルっていうのは抱きしめる、というような意味で、ティアは動物。つまり子どもが抱きしめるお人形のことを指します。西洋の子どもたちは幼いうちから1人でベッドで寝るという習慣があるのはよく聞くと思いますが、そのために必ず子どもたちは自分のお気に入りの人形を持っています。
友達の家に泊まりに行っても、「人形持ってる?」とか「持ってきた?」とか絶対聞かれるし、「ないなら貸してやろうか?」とか言われるくらい、誰もが持っているものなんですよね。そして今回クラス旅行1週間の持ち物リストにもどーんと「抱きぬいぐるみ(1つだけ)」と書いてあったわけです。

日本人には馴染みの風景、母と子の添い寝。海外だと幼稚園でも親と一緒の寝ることに違和感があるようです。一方で、日本だと大きな子が人形持って寝るのには違和感、かもしれないね?
もうここではそれが当たり前過ぎて、最初は私もふーん、と見逃していたんですけど、考えてみるとこれって日本にはない習慣ですよね。
日本の5年生の子どもはきっと人形持って寝てないし、なんなら幼稚園でも人形を持ってないと寝られないお子さんってそんなに多くないんじゃないかなと思うんです。でね、これって多分、日本は添い寝文化があるから人形が必要じゃなかったんじゃないかなと想像しています。
別に人形持ってちゃいけないってわけじゃないけど、子どもが安心して寝るのに人形が絶対必要なものだ、とみんなが認識しているっていうのは、考えてみるとおかしな話だなって思ったんですよね。そして、そもそも本当に子どもが必要としていたのは、なんだったんだ? って思いませんか?
海外在住が長くなって、子育ての中でもちろん西洋の見習うべきいいところもたくさんあるんですけど、時々違和感を感じることもあります。このお人形にしても、もしお母さんと一緒にある時期まで一緒に寝ていたら基本的には必要ないものかもしれない。要は、当たり前にあるものをなくして、それを別のもので補っている、っていうことが特に西洋、または現代のくらしや食卓、子育ての中であるように思うんです。

私なんか添い寝歴20年近いですから(笑)。でも結局その方が子育て楽って思っています。
その点でみると、日本の昔ながらの子育てや食卓って、手間がかかるとか、時には野蛮だとか、大変だって印象が多いこともあると思うんですけど、長いスパンでみると、無駄がなく、理にかなっているっていうことも多い。それって結局、面倒でも時間をかけて自然の流れに沿って紡いで行くなかで育まれてきたものなのかもしれないなぁと思うと、忙しい現代の暮らしのなかで、無理はしないでいいけれど、やっぱり残していきたいところもあるな、と思ったりする今日この頃です。

無駄に手間暇はかけないけど、子育ても食も手間暇かける良さもあるよね。味噌作りは面倒だけど美味しい、味噌で日頃の料理が楽になるのでずっと作ってる。バランスを取りながらやってけたらいいな。

日登美/ひとみ
3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。現在はモデルとして活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに、食、暮らしと子育てのワークショップ、オンライン講座などを行う。
台所から子育て、暮らしを豊かに。「Mitte(ミッテ)」
instagram / @hitomihigashi_b
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