「気持ち悪いもの」にも遭遇するけど。本当は食べ物って、そういうところからやってくるんだよね【日登美のタベコト in Berlin・85】
ベルリン在住で6人の子どものお母さん。モデルとして活躍する傍ら「台所から子育て、暮らしを豊かに」をコンセプトに、オンライン講座とウェブサイトを主宰している日登美さんによる、「食」からはじまるエッセイです。
おじいちゃんの家のりんご
ドイツには夏休みのあとに2週間の秋休みがあります。これを過ぎると寒さと暗さが過酷な冬がやってくるので、お天気に恵まれた今年の秋休みはみんな嬉しそう。秋休みは近隣のヨーロッパ諸国に旅行に出る人も多いなか、我が家は夫のおじいちゃんの家に行って束の間のドイツの田舎暮らしを楽しみました。
なかでも庭にほったらかしで育っているりんごの収穫はみんなの楽しみ。日本だと放っておいても柿がびっしりと実るのを見かけるのと同じように、ドイツではりんごがどこにでも。ちなみに以前住んでいたブラジルでは、放ったらかしマンゴーがいっぱいだったなぁ。
なんでも、おじいちゃんちのりんごは100歳以上も齢を取った木だそうで、原種に近く、見かけは梨のように茶色。酸味が強く、普通なら美味しくないと感じるでしょう。だけど実はお菓子に最適。果物にも個性があって、向き不向きがある。適材適所があるんですね。
そのほか落ちているりんごも無駄にはしません。こんな美味しくなさそうなりんご、食べれないんじゃない? と思いきや、傷んでる部分を切り取って、スチーマーにかけたら美味しいりんごシロップが出来上がるのです。
スーパーだったら絶対売れないようなものでも、ちゃんと美味しく食べられる。りんごを採るときは虫がいたり、虫食いがあったり、いろんな「気持ち悪いもの」にも遭遇する。だけど、それも含めて自然なもので、本当は食べ物って、そういうところからやってくるんだよね。ちょっと傷があったって、ちょっと凹んでいたって、捨てなくていい。食べられる部分が必ずある。
傷だらけのりんごを家族で刻みながら、なんだかこれって子育てにも似てるなぁって思ったのです。生きてるってそういうことだよね。
新鮮な生命力たっぷりのりんごは、食べるとすごく元気が湧いてきました。夜には薪ストーブに火をいれて、温まる。土と水とおひさまが作った食べ物と触れ合うこと。水や火や土を感じられる暮らし。都会暮らしが長くなってきた我が家ですが、何か大切なことを思い出させてもらったような気がした秋休みでした。
日登美/ひとみ
3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。現在はモデルとして活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに、食、暮らしと子育てのワークショップ、オンライン講座などを行う。
台所から子育て、暮らしを豊かに。「Mitte(ミッテ)」
instagram / @hitomihigashi_b
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