思春期の子どもとのコミュニケーションは「野生動物の餌付け」のように。夜寝る前に台所に「置きごはん」を用意しておく効果【日登美のタベコト in Berlin・50】
ベルリン在住で6人の子どものお母さん。モデルとして活躍する傍ら「台所から子育て、暮らしを豊かに」をコンセプトに、オンライン講座とウェブサイトを主宰している日登美さんによる、「食」からはじまるエッセイです。
「置きごはん」の効能
思春期って難しいですね。幼児期は幼児期でいろいろ大変だったなぁと思うのですが、思春期の子どもたちもこれまた手ごわいものです。
我が家では台所を中心に食育に励んできたほうかな、と思うのですが、だからってずっと思うようになるわけではありません。大きくなるほど、子どもは子どもの感覚で自分の行きたい道を選んでいくのですから。それは食卓だって同じことかと思います。
家族とより友達との時間が増えて、親にはいろいろ話してくれなくなって、子どもは子どもで忙しい。食卓を一緒に囲むことも少なくなってきた今日この頃。それでもたった一つ、コミュニケーションをつなげるもの、それがやっぱり食卓なのです。
そのコツは一緒に食べることではなく、とにかく野生動物の餌付けのように、台所にご飯を用意しておくこと。最近では入れ違い、すれ違いの多い大きな子どもたちとのコミュニケーションには、この台所の「置きご飯」が活躍中です。
夜寝る前に置いておいたご飯が、朝には空になっている!というのはまさに夜行性の動物の餌付けに成功した感があって、クスッと笑ってしまうものです。
朝、子どもより早く家を出たときには簡単な朝食やお弁当を用意しておく。すると夕方には空のお弁当が返ってくる。それだけで親子のコミュニケーションは十分な気もします。別にすごいご馳走を作らなくたっていいんです。大事なのは何か食べるものを用意したよ、というメッセージが伝わること。
トースト一枚、おむすび一つでもいいんです。けんかをした日も、仕事で遅くなった日も、「置きご飯」をする。できない日もありますが、お手紙交換のようなつもりで続けています。
そうこうしているうちに、子どもが自分で夜食を作っていたりもして。それもヘルシーなサラダやサンドイッチを。そんな姿にもクスッと笑ってしまいます。あんなにジャンクなラーメンやお菓子を食べていた子でも、ピークをすぎると自然と自分から何かを作るようになるものですね。これは今のところ上の4人の子ども全てに共通している成長の過程です。
というわけでいろいろある思春期ですが、「まぁ、ちゃんと食べてりゃ大丈夫か」と根拠のない自信が持てちゃうのが、食育の最大の魅力といえるでしょう。
日登美/ひとみ
3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。現在はモデルとして活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに、食、暮らしと子育てのワークショップ、オンライン講座などを行う。
台所から子育て、暮らしを豊かに。「Mitte(ミッテ)」
instagram / @hitomihigashi_b
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