ご近所散策!ドイツで過ごす水辺の週末【教えて!世界の子育て~ドイツ~】
海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。
場所や文化が違うと、子育ては違うのでしょうか。日本での子育てや生活と同じこと、違うこと。各国からリアルな声を伝えてもらいます。
ドイツで子育てをする中原さん。今回は、ドイツでの週末の過ごし方について紹介してくれます。家族で過ごす、特別じゃないシンプルな週末は、とてものんびり、ゆったりと流れる時間が伝わってきます。
チャリでGo!
のんびりするドイツの週末
なかなか春が来なかった今年のドイツも6月半ばになって気温30度を超える日がちらほらとでてきました。いよいよ、夏の到来です!
乾燥したヨーロッパの気候はすぐに汗だく! とはならないけれど、草むしりをしていると、麦わら帽子の影から出た腕が容赦ない日光に炙られてジリジリと焼ける音がする。暑い!! 暑いよ、水に飛び込みたい! と皆が渇望する週末はどこの水辺も人で賑わっています。
ドイツの水辺というと、プールはもちろん川や湖、北ドイツにはバルト海と北海もあります。わたし全然知らなかったんですがドイツには湖がたくさんあるんですね。
データによると、常時水のある自然の湖が12000個以上、1ヘクタール以上の大きさの湖(人工湖含む)で15000〜30000個もあるそうです。そういえば古城が湖畔に建っていたりするな。
ドイツの首都ベルリンは街のど真ん中をシュプレー川が流れ、豊かな水はたくさんの水路や湖をつくっています。大都市であるにもかかわらず憩いの水辺や自然がすぐそばにあり、泳げる湖も自転車でいけるような距離にあります。
そんなベルリンをぐるっと囲むブランデンブルク州と、南ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州は湖の宝庫! 数えきれないほどのちいさな湖が水辺に住む動物を支え、自然保護区も多くあります。
また、ノルトライン・ヴェストファーレン州、ザクセン州、ザクセン・アンハルト州など工業・資源採掘が盛んな地域には、採掘跡に水をたたえた湖が多くあります。こういった採掘は、後々自然に溶け込ませ、なおかつ市民が利用しやすいようにと形状を考慮して掘られているそうです。
さあ、では近所の湖に涼みに行きましょう。
水着に着替えたら浮き輪とブランケットと軽食と飲み物持って、チャリに乗ってGo!
ゆったり時間と
好きなものに囲まれて
森の中を進んでいくと湖周辺はちょっとした避暑地のようになっています。木々の合間にちらほらと建つバンガローや小さなおうちの屋根が見える。そこにはすずやかな影が落ち、風も通って気持ちいい。あ〜小さいおうち、かわいいな〜。
これらは「Neheerholungswonung(近郊静養地)」と言われ、その名称どおり週末や長めの休暇をゆったり過ごすのです。中は生活に必要最低限なものと庭いじりの道具がおさまるくらいの規模で、敷地にはボートがあったり、サウナが建ってたり。持ち主の個性が出ます。
日常から遠ざかったこの小さな別荘で鳥の声だけを聞きながら静かに本を読み、釣りをし、おなかが空いたらたっぷり時間を掛けてお料理を楽しんだり、野草やベリーを摘んで食卓の彩にしたり。
派手じゃないけれど、ゆったり流れる時間と自分の好きなものに囲まれて日頃の疲れを癒やすのがドイツ暮らしでの贅沢です。
森を抜けたら目の前が開けて水面が見えてきました。ここは砂を採掘した跡地のようで水際には細かな砂がさらさらと残ってビーチのようになっています。長く暗い厳冬を越えてくるドイツ人にとっては注がれる熱い日差しは恋焦がれた恵み。
シミ、そばかすなど気にしません。熱い砂の上では日光浴を楽しむ人が寝そべり、体ぜんぶで短い夏を謳歌するのです。
水は透明で、深みに行けば行くほどきれいな深緑になっていきます。地質水質によっては水の青い湖もあれば、エメラルドグリーンの湖もあります。
ああ、きれいだー! 沈んだ灌木も見える。はやく飛び込みたい。
ブランケットを木陰に広げて荷物を置いたら水際へと心がはやります。
おっと、水難防止グッズを忘れずに。
シンプルで特別じゃない週末が
心の中の宝物
ひんやりした水に足を差し入れると浅瀬にゆらめいていた影がパッと散り、ああ、あれは小魚だったのかとはじめて気付きます。そのままリンゼと一緒にボーッと立っていると逃げた魚たちがまた戻ってきて、足をくすぐってきました。
「ぐふふ、おかあさんくすぐったいねえ」
黄緑色の背中をした魚を水面から眺めていたら他の子供たちがなにしてるのー? とやって来て隣に立ち「Fisch(さかな)?」と訊いて来ました。
「Ja, hier schwimmen viele kleine Babyfische, die sich für meine Füße interessieren.」
うん、魚の赤ちゃん、私の足が珍しいみたいなの。つんつんしてきてかわいいよ
「Knabbern oder beißen sie? 」
かんでくるの?
「Es kitzelt nur.」
くすぐったいだけだよ
「Welche sprache sprecht ihr?」
あなたたち、なにごではなしてるの?
「Wir sprechen auf Japanisch! Meine Mama kommt aus Japan.」
にほんごだよ! わたしのおかあさんにほんからきたの
そんなことを話しながらみんなで並んで魚の数を数えたり、すこし泳いだり、綺麗な石を拾ったり、おやつを交換したり、鳥の名前を言い合ったりしているうちにすっかり時間は経ち、森から吹く風が涼しくなって来ました。そろそろ帰ろうかな。
こうやって過ごすシンプルで特別じゃない週末が、心の中の宝物になっていくんだろうな。