育児と仕事の両立って難しい? 先輩パパ、教えてください! だいすけお兄さんがフリーアナウンサー武田真一さんと対談【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・本誌編】
だいすけお兄さんが、パパやママの代わりにさまざまなジャンルの専門家からお話を聞く「だいすけお兄さんのパパシュギョー!」。kodomoe本誌で人気の連載を、webでもご紹介します。今回のスペシャルゲストは、長年NHKの報道の顔として活躍してきた武田真一さん。30年以上勤めたNHKを2月末に退局しフリーアナウンサーとなった武田さんと、だいすけさんがふたりでたっぷりパパトーク!
さらに、ウェブオリジナルのエピソードはこちら→「『就職は大丈夫?』『結婚はいつ?』子どもが成人したって、親の心配は尽きません。」
育児と仕事の両立って難しい?
先輩パパ、教えてください!
アナウンサーも父親も
どちらも一生懸命でした
NHKを卒業し、今春からは新たに日本テレビの情報番組「DayDay.」の総合司会として、月曜から金曜まで旬の情報を届けている武田真一さん。私生活では社会人と大学生、ふたりの息子のパパでもあります。先輩パパが振り返る、お子さんとの思い出は?
だいすけお兄さん(以下だいすけ) 武田さんはこれまで長い間、ほぼ毎日ニュースを正しく伝えるという大変なお仕事をされていましたが、そんな中での子育ては、振り返ってみるといかがでしたか。
武田さん(以下武田) 僕は初任から7年間地方局にいて、東京のアナウンス室勤務になったのが、長男が2歳になる前でした。子育てが一番大変な時期に、自分も全国放送という勝負のときが来たって感じで。でもやっぱり若かったから、仕事も子どものことも一生懸命やろうと思ってました。
何か事件が起きたら夜中でも飛び出していくし、家族で出かけていても、車のラジオで緊急ニュースを聞くと、そこから僕だけNHKに向かったり。世界中のできごとが家庭に影響するような(笑)。
だいすけ その中でどう、仕事と育児の切り替えをされていたんですか。
武田 育児があったから、24時間仕事のことを考えずに済んでいたと思うんですよね。家に帰ったら子どもたちと遊んで、休みの日には何もなければ一日中子どもたちと一緒に過ごすのが、僕にとってはストレス解消だったし、一番幸せなことだったんです。
ニュースキャスターの仕事って、基本的にはスタジオで原稿を読むことなんですよね。でも、ニュースの現場でいろんな状況に置かれている人たちと直に接しているようなリアリティを持って伝えなきゃいけないと、ずっと思っていました。その拠り所となるのが自分の家庭であり、子育ての体験だと。
ニュースって、あらゆる暮らしを反映していますよね。例えば税金、子育て予算のニュースは、一人の親としてどう思うんだろう、それが想像できたのはやっぱり、自分が子育てをしていたからかと。
だいすけ 家庭でひとりの父親として生活をすることが、ニュースの現場で正しい情報を伝えることにも活かされていたんですね。
「ハリー・ポッター」が
長男の読書の原点に
だいすけ 武田さんは読み聞かせも上手かと思いますが、お子さんに本を読んであげたりされましたか?
武田 はい、やってました。本が好きになってくれたらと、上の子が幼稚園のときに『ハリー・ポッターと賢者の石』を本屋さんで買ってきて、読んであげて。でも、あまりにも長いから僕が途中でやめちゃったんですよね。そしたらいつの間にか、息子が自分で読んでいたんです。「そういえば、あれ読んだ?」と聞いたら「読んだよ」って(笑)。これを曲がりなりにもひとりで読んだことが、やっぱり彼の読書の原点だと思うんです。
だいすけ 武田さんご自身も、本はお好きだったんですか。
武田 はい。僕は5人きょうだいの長男なんですよ。昔だから親が子どもにつきっきりで面倒を見たりはしないけど、本はいっぱいあったんです。今のようにゲームとかはない時代ですから、物語全集や百科事典や、それを毎日取っ替え引っ替え読むのが、もう唯一のエンターテインメントですよね。
そうすると、自分が興味のあるものだけじゃなくて、ふと手に取った本の中に「えっ、面白い!」って、偶然の出会いがあるんですね。今の言葉で言うと“セレンディピティ”(「幸運な偶然」の意)、それがすごくよかったんです。エジプトのピラミッドの発掘の話がすごい好きだったんですが、仕事でエジプトに中継に行ったとき、それが役に立ったんですよ。いろんな本を読んでいたことが今に活きている。そういう体験を子どもにもさせたいなと。でも、下の息子はまた違うんです。
だいすけ どうだったんですか?
武田 下の子は本よりも、とにかく体を動かすのが大好きで、「サッカーやりたい」と。当時僕はサッカーが全然わからなかったので、衛星放送を契約して、スペインリーグをずっと見てたらハマっちゃって。それからは、子どもの練習にも試合にもついて行って。
でも、ちょっと反省があって。下の子がサッカーを始めた頃、上の子がちょうど中学生ぐらいで、「もうなんでも自分でできるだろう」って、下の子につきっきりになっちゃったんですね。その頃、上の子が土日どうやって過ごしてたのか、あまり記憶にないぐらいで。やっぱり、本人はさびしかったでしょうね。下の子が生まれたときも、上の子は小学1年生だったから、「お兄ちゃんなんだからなんでもできるでしょ」って感じで接してしまって。今思えば6、7歳の子がなんでもできるわけないのに、申し訳なかったです。
だから、こうやって子育てを語ってますけど、僕は全然模範的な親でもなんでもないし、失敗や後悔もたくさんあります。
だいすけ 今はもう息子さんたちも成人されて、一緒にお酒を飲んだりするんですか。
武田 しますね。ふたりとも離れて暮らしてるので、家に来たときは「最近仕事はどう?」「土日は何してたの?」とか話しながら。楽しいですよ。そういう日が、本当にあっという間にやってきます。
どんなに小さくても
子どもは親とは別人格
だいすけ そうですよねえ。僕も子どもが生まれてからこの3年、あっという間でした。9年間歌のお兄さんをしていましたけど、エンターテイナーとして子どもたちに向き合うのと、親として向き合うのは全然違いますし。「この子がまっすぐ育つために何をすればいいんだろう?」「これでよかったんだろうか?」って、自問自答もたくさんありますし。
でもとにかく歌はたくさん知っているから毎日歌おう、みたいな。武田さんは、仕事が子育てに活きたことってありますか?
武田 そうですねえ……。ニュースの仕事をしていたので、子どもにも社会のできごとに関心を持ってほしかったんですよ。グレタさんが気候変動について発信していたので、「同世代で何か感じることないのか」とか、「もっと社会に目を向けろよ」みたいな。
だいすけ ザ・パパですね(笑)。
武田 そう、「気候変動というのはなあ」「2050年までにカーボンニュートラルを……」とか、家で一生懸命解説をするんですけど、「はぁ……」みたいな感じで、あんまり聞いてくれなかったです。
それはそうですよね、彼らは彼らで、受験だったりスポーツだったり、日々取り組んでることがあるわけだから。親が何か押しつけようとしても全然ダメなんだなっていうのが、今になってみればわかります。子どもは子どもで、親とは全然違う人格だから。
だいすけ ニュースのイメージが強い武田さんが、家ではそんなふうに空回りって聞くと、すごくほんわかしてしまうというか(笑)。でもねえ、パパってそうなんですよねえ。僕もとにかく歌ってはいますが、パパの歌よりもYouTubeがいいときもありますよ。
武田 やっぱりね、小さいながらにもう「自分はこれが好きだ」っていうのが、あるんですよ。上の子は本を好きになってはくれましたが、「ハリー・ポッター」以降はだんだんマンガとかラノベとか、ゲームとかになってきて。
だいすけ 活字はどこいったんだって。
武田 そうそう。で、アニメも大好きで。でも、一緒に観てみると面白いんですよね。すごく感動するものがあったり。それを何かの折に話していたら、「じゃあEテレでアニメの番組やりませんか」って。子どもを通して世界が広がって、仕事につながったりもして。
だいすけ いいですね。子育てから自分の世界も広げていけるって。
武田 上の子は野球をやっていたので、僕はチームのお父さんと一緒に草野球をやったり、下の子のサッカーチームのお父さんとも仲良くしていました。学校の「おやじの会」にも参加して、いまだに一緒に飲みに行ったりもしますし。
子どもと、子育てと向き合うことで、家と職場の往復だけでなく地域の中で友人ができたり、生き方を多角的に見ることができて、自分も救われたと思いますね。
仕事と育児のバランスを取っていくのは、本当にとても大変で、「大変だけど、頑張って」としか言えないんですけどね(笑)。でも「楽しいことがいっぱいあったって、絶対あとで思えるよ」って。
若い頃に好きだったものが
自分を助けてくれる
だいすけ 春から大きく環境が変わりましたが、大変なときの気分転換には、どんなことをされていますか。
武田 最近はギターを弾いたりしてますね。バンドをやっていたんですけど、就職後は本格的に弾く余裕がなくて。平成から令和になるときの特番でキャスターを担当したとき、僕はかなり満足しちゃったんですね。平成の30年間NHKで仕事して、ああ、これでひとつの時代が終わったからいいやと思って、新しいギターを買ったんですよ。自分が若いときに好きだったものは、持ち続けた方がいいと思いますね。きっと折に触れて自分を助けてくれると思う。
上の子が小さい頃に生き物が好きで、ハムスターやカブトムシ、ミドリガメを飼ったりしましたが、僕も昔、生き物好きだったんですよね。子どもと一緒に、「あ、これ自分も好きだったな」っていうことを一緒にやったりとか、それも楽しかったですね。
だいすけ それもいいかもしれないですね。自分が好きだったものならいろんなことを教えられるし、自分もより一層頑張りたくなっちゃいますもんね。
とにかくかわいがること!
子どもは自分で成長します
武田 今は少子化で子どもを本当に大事に育てる時代で、情報過多な中、自分の子育てはこれでいいのかとプレッシャーを感じる方も多いと思うんです。でも、子どもはちゃんと自分で成長しますから。
唯一大事だと思うのは、もう、とにかくかわいがること、愛情をかけて育てることですね。人に対する信頼があれば、自分で好きなことを見つけてくるし。「これが好きだ」って言ったら、その好きなことを与えてあげればいいし。
だいすけ いろんな経験や選択肢を与えてあげられるのは親の方かもしれませんが、それを選ぶのはやっぱり子ども自身ですからね。
武田 本当にそうですね。親とは違う人間だし、人それぞれ。そこを理解することですよね。
シュギョーのまとめ
Today’s Master
武田真一さん
たけたしんいち/1967年熊本県生まれ。1990年にNHKに入局、「NHKニュース7」「クローズアップ現代+」のキャスターなどを歴任。2023年春よりフリーアナウンサー。
横山だいすけ
よこやまだいすけ/千葉県出身。NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんを2017年3月まで最長9年務める。「子どもに良質の音楽を届けたい」という目標のもと、舞台、ラジオ、TVなど幅広く活躍。YouTubeチャンネル「横山だいすけチャンネル」も配信中。
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撮影/大森忠明 スタイリング/吉岡ちさと ヘアメイク/安藤千浪 編集協力/原陽子(kodomoe2023年10月号掲載)