全部できなくていい そう教えられたら十分。だいすけお兄さんがヨシタケシンスケさんと対談【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・本誌編】
第11代歌のお兄さん・横山だいすけさんがさまざまなジャンルの専門家からお話を聞くシュギョー企画。ヨシタケシンスケさんとの本誌対談を全編ご紹介します。
11月11日に東京・二子玉川で開催される「コドモエ おやこフェス」の「シュッチョー★パパシュギョー」では、だいすけお兄さんとヨシタケシンスケさんとの対談再び! だいすけさんが歌う童謡で一緒に手遊び。さらにふたりによるヨシタケシンスケさんの絵本の読み聞かせも! 夢のコラボステージ開催予定です(こちらの予約は終了しました)。
Today’s Master
ヨシタケシンスケさん
よしたけしんすけ/絵本作家。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で絵本デビュー、MOE絵本屋さん大賞6冠他受賞多数。作品に『ヨチヨチ父 とまどう日々』(赤ちゃんとママ社)『あつかったら ぬげばいい』(白泉社)など。
先輩パパ、育児ライフの
本音を教えてください!
全部できなくていい
そう教えられたら十分
だいすけさんのラジオ番組イベントに出演したこともあるヨシタケシンスケさんは、2人のお子さんを持つ先輩パパ。久々の再会で、パパトークが盛り上がります!
だいすけお兄さん(以下だいすけ) ヨシタケさんの育児エッセイ『ヨチヨチ父』、共感しながら読ませていただきました。こちらは、最初のお子さんのときの思い出ですか。
ヨシタケさん(以下ヨシタケ) そうですね、子どもが生まれた頃に依頼されたんですけど、当時は「それどころじゃありません」って断ったんですよ(笑)。2年ぐらいしてから、連載をお受けしました。絵本作家というと「それなら、いいお父さんで」と言われたりしますが、全然そんなことはなくて。子どもに「早くしなさい」しか言ってないんですよね。それこそだいすけさんは、「お子さんは幸せ者ね」とか言われたりもしますか?
だいすけ そうですね、でも実際はそんなに、思ったようになんていかないですよね。毎日発見と驚きと、立ち止まることもしょっちゅうで、後ろに下がっていることの方が多いんじゃないかと。
ヨシタケ 「前に進もう」っていろいろやった末にたどり着く結論が「進まないなあ、これ」っていう。アップデートされないなってわかる、そこが逆に大事なところですよね。親になったからって、立派な人間になれるわけでもないじゃないですか。
子どもたちには、「大人って偉そうなこと言うけど、その通りにはできてないんだよ」って、うまいこと伝わるといいなあと思うんですよね。できないことと、ギリギリできることを子どもに見せて、「全部できる必要はないんだよ、足りない部分は人に助けてもらえばいい。人間はそうやって補い合って群れで生活してる生きものなんだよ」って教えられたら、それで十分かなと。「だから安心して大人になっていいんだよ」ってことが伝われば、世の中の見え方が違ってくるんじゃないかなって。とはいえ、難しいんですけどね。
だいすけ そんなふうに子どもに向き合えるって、すごく素敵だと思います。どうしても子どもを前にしたときに、頑張って「これやんなきゃ、あれやんなきゃ」と、最初は好きでやりたかったはずのものに、だんだん追われてしまうことが多くなると思うんです。子育て中ってどうしても家の中で過ごすことが多いから、コミュニティが狭くなるじゃないですか。その中で気づきを見つけることって、今の時代は特に難しい。
ヨシタケ そうですねえ、情報が多いのに、選ぶ基準は誰も教えてくれないから、どうしても減点方式になるんですよね。でも、最初にできるだけ「お前の親はたいしたことないからな」「期待しないでね」ってハードルを下げておくと、加点方式になっていくんですよ。「今日もちゃんと生き延びたから、いいだろ?」って、「毎日20点いければよしとしよう」となってくると、大体プラス評価になっていくんです、自分自身も。
だいすけ それ、いいですね(笑)。ハードルをとりあえず下げに下げる。僕、運動はあまり得意じゃないんですよ。だから踊りながら歌うなんて、人の3倍は練習しなきゃいけなくて。でもあるとき、「お兄さん、体が硬いし運動苦手なんだ」って言えるようになってからは、すごく気が楽になったんです。運動が苦手な子たちに「えっ、ぼくも!」って言ってもらえたり、できるようになったことを一緒に喜んでもらえたり。苦手意識が逆に自分の個性にもなった、って思えたんですよね。ものごとのとらえ方ひとつで、見えるものが変わってくるなあって。
今の子育てや親子関係を
今ジャッジしなくてもいい
ヨシタケ 今の親子関係が幸せかどうか、今決める必要はないんだなってことは、僕もついこの前わかったばかりで。わからないことは保留にしておくのも大事ですよね。子育て中は本当にバタバタだから、「子育てって、楽しいの?」って、わからなくなる。夜眠れないし自分の時間もないし余裕もないっていう日々を、「不幸」ってフォルダに入れるのでなく、とりあえず「名称未設定」のフォルダに入れておいて、5、6年経ってからそのフォルダ名を無理矢理「幸せ」って書き換えちゃえばいいんですよ。今のバタバタな毎日が幸か不幸か、ジャッジする理由も必要も、本当は全然ないはずで。いいことも悪いことも、モヤモヤする気持ちも全部ひっくるめての、親っていう時間、大人っていう時間だし、人生の使い方だし。
だいすけ なんか今は本当にバタバタすぎて、何がなんだかわからないっていうのが正直なところです。でも、いつか自分の中でちゃんと整理できたときに、言葉にできるんじゃないのかなあって感じます。
ヨシタケ そう、時間がかかるんですよね。今はやっぱりオムツの残り枚数だけで頭がいっぱいじゃないですか(笑)。「あと何枚あったっけ?」って。これから2、3年経って落ち着いて、「いや、できてなかったねえ」「でも元気に育ってるんだよねえ」って言えたときに、「だいすけお兄さんもこれだけできてなかった」っていう事実に、きっとたくさんの人が救われると思うんですよね。
シュギョーのまとめ
大いに盛り上がって本誌だけでは伝えきれなかったお話を、webで2回に渡ってご紹介!
「大人が弱さを出していい。それが子どもの選択肢を増やす。」前編はこちら
「そんな偉そうなことを、どの口が言うか」って(笑)。ヨシタケシンスケさんも自分の子どもには評価してもらえない!?」後編はこちら
横山だいすけ
よこやまだいすけ/千葉県出身。NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんを2017年3月まで最長9年務める。「子どもに良質の音楽を届けたい」という目標のもと、舞台、ラジオ、TVなど幅広く活躍。NHK Eテレ「すイエんサー」(毎週火曜19:25~19:50)他出演多数。YouTubeチャンネル「だいすけお兄さんのわくわくスクール」も配信中。
最新情報はこちらをチェック!
Web:yokoyamadaisuke.com/
Blog:ameblo.jp/daisuke-yokoyama/
Twitter:@daisuke_minna
撮影/大森忠明 スタイリング/吉岡ちさと ヘアメイク/安藤千浪 編集協力/原陽子(kodomoe2021年12月号掲載)
【だいすけおにいさんのパパシュギョー】の一覧を見る
次回の話を読む育児と仕事の両立って難しい? 先輩パパ、教えてください! だいすけお兄さんがフリーアナウンサー武田真一さんと対談【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・本誌編】
前回の話を読む小児科医だから、脳外科手術ができるわけじゃない。それぞれが得意を活かせば、できることはあると思うんです。だいすけお兄さんが、国境なき医師団の加藤寛幸先生と対談。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・17】
最新話を読む常に新しい進化を続けるサーカス、そこは家族みんなが笑顔になれる場所。だいすけお兄さんが、木下大サーカス社長・木下唯志さんと対談。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・19】