納豆と野沢菜、あとは好きなものを混ぜるだけ。簡単で罪悪感のないメニュー「新潟県・きりざい」【おうちでカンタン!郷土ごはん・12】
子育て中は台所仕事がままならないことって、たくさんありますよね。おいしくて栄養のあるものを食べさせてあげたいけれど、とにかく料理する時間がない! レパートリーもマンネリ! そんなときのお助けメニューにできる“郷土料理”を、さまざまな地域で育ったママたちに教えていただきました。
子どもと一緒に作るところから楽しめる
新潟県・きりざい
今回ご紹介するのは、忙しくて凝ったものができない日や、もうお腹すいたと騒ぐ子どもたちにとにかく急いで何かを出さなければ!という日のごはんにぴったりのメニュー。新潟県でアナウンサーをしている水島知子さんが、「きりざい」を教えてくださいました。
「きりざいは、ごはんのお供やおつまみとして食べられているものですが、我が家ではごはんにのせて丼にして食べています。栄養満点のごはんです」
今回、郷土ごはんを紹介してくれたのは……
水島知子さん
みずしまともこ/フリーアナウンサー/ヨガインストラクター/絵本専門士
新潟市在住。千葉県柏市出身。島暮らしに憧れ、佐渡島で暮らしたことも。BSN新潟放送でアナウンサーとして勤務し、出産を機にフリーへ。ラジオ番組を担当する他、ヨガ講師をしたり、大好きな絵本の読み聞かせ活動を行っています。
納豆を大切に食べるための魚沼地方の郷土料理
きりざいは、ひらがなで書きますが、「きり」=切る、「ざい」=野菜の菜という意味の言葉。雪深くて肉や魚があまり食べられない時期、貴重なタンパク質となる納豆を大切に食べるため、お漬物や野菜を混ぜて量を増やした料理なのだそう。
「はじめて食べたのは、南魚沼市へ取材で訪れたときです。取材先のお宅で撮影が終わったあと、おばあちゃんが“おなかすいたでしょう”と、南魚沼産のコシヒカリと、きりざいをちゃぶ台に並べてくれました。千葉県出身のわたしはそこではじめて出会って、とても感激したんです」
そのとき水島さんが食べたのは、野沢菜やたくあんのほかに、にんじんなども入った色とりどりのきりざい。家庭や好みによって入る材料は変わりますが、納豆と野沢菜が入るのがポイントです。
「我が家ではサーモンやマグロ、しらすなども入れています。きりざいを食べるといつも、あの広い居間で、優しいおばあちゃんが作ってくれたときのことを思い出します。雪深い山沿いでの生活は、想像できない苦労がたくさんあるはずですが、とにかく人が本当に温かくて。寒さが厳しいぶん、人の心は温かくなるのではないかと思いました」
子どもたちもお手伝いできるから、みんなで作る
きりざいは、魚沼地方のホテルや旅館の朝食でもよく見かけるメニューだそう。新潟県内のお土産屋さんや学校給食にもなっています。
「入れる材料や味つけは家庭によって異なりますが、魚沼地方では各々のご家庭で作っていますね。我が家でも、息子も夫も大好物なので、2週間に1度くらいは作っています。食べやすくておいしいと大好評です。栄養価も高いし、お子さんと一緒に作っても楽しいですよ」
切って混ぜるだけの簡単料理バンザイ!
きりざいの作り方
材料(4人分)
納豆(ひきわり)……2パック
野沢菜……50g
たくあん……100g
サーモン(刺身用)……150g
焼き海苔……1枚
しらす……適量
白ごま……適量
だし醤油……適量
作り方
1.まずは下準備。
・野沢菜、たくあん、サーモンは食べやすい大きさに切る。
・粒がある納豆を使う場合は少し叩いておく。
・海苔を千切りにする。
2.材料を全部混ぜる。
水島さんにきりざいのおいしいポイントを聞くと、「野沢菜とたくあんの味と食感を、納豆がつなぎ合わせてくれているところ」という答えが。納豆はひきわりか、粒のものを叩いて使い、野菜と馴染みやすくするのがおいしくなるコツです。好みの野菜やそのとき冷蔵庫にあるもので作れるのもいいところですよね。
我が家でも水島さん流のどんぶりに。ごはんにかければ、もうこれだけで十分なごちそうです。
「新潟県産の美味しいお米と一緒にいただくと、一体感がさらに増して最高です。小さな子どもがいると毎日の献立を考えるのも作るのも本当に大変ですが、切って混ぜるだけの簡単料理を楽しんでもらえたら嬉しいです」
ヒトクチメモ
当たり前のことですが、その土地にはその土地ならでは暮らしがあり、気候や採れるものもまったく違います。だからこそ郷土料理というものが根づいている、ということを、くっきりと感じたレシピでした。家族が健康でいられるように、いつもみんなが満腹でいられるようにと知恵を働かせ、考えられた郷土ごはんを受け継いでいけたらいいですよね。
きりざいはとにかく簡単で、なのに罪悪感がまったくないのが嬉しいところ。そしていろんなものが入っているから、たくあんのカリカリ、野沢菜のしっとりしたしょっぱさ、サーモン……と、賑やかな味で食べていて楽しい一品でした。もう疲れた!という日のためにも、ぜひ覚えておいてくださいね。
夏の暑い日には作って冷蔵庫に入れておくのもおすすめ! おとなが夏バテしないよう、しっかり食べて、日々の子育てをがんばりたいものです。
吉川愛歩
よしかわあゆみ/食のライター・料理家
13歳と5歳の母。暮らしと食のコンテンツ制作に携わり、執筆と料理の仕事をしている。『メスティンBOOK』(山と渓谷社)や『キャンプでしたい100のこと』(西東社)などのレシピ監修も行っている。
Instagram : @yoshikawaayumi