2022年1月17日

「なべっこ遠足」もいい思い出。寒い季節に温まる、秋田県・だまこ鍋【おうちでカンタン!郷土ごはん・10】

子育て中は台所仕事がままならないことって、たくさんありますよね。おいしくて栄養のあるものを食べさせてあげたいけれど、とにかく料理する時間がない! レパートリーもマンネリ化!  そんなときのお助けメニューにできる“郷土料理”を、さまざまな地域で育ったママたちに教えていただきました。

子どもと一緒に作るところから楽しめる!
秋田県・だまこ鍋

「おにぎりをお鍋に入れるの!?」と、我が家の子どもたちがびっくりして歓声をあげた「だまこ鍋」は、秋田県の郷土料理。小さなころ、家族と一緒に「だまこ」を作ったという思い出を教えてくれたのは、フォトグラファーの成田由香利さんです。

「だまことは、ごはんを潰して丸めた、きりたんぽのようなもの。お米の収穫が終わると、新米でだまこを作るのですが、またこの新米で作るだまこがおいしくて。寒い時期に身体を温めるのにもぴったりのお料理です。自治会の集会や親戚が集まったとき、みんなで一緒に作ってお鍋を囲んだなあ、という記憶をなぞるように、わたしも子どもたちと作ったりしました」

今回、郷土ごはんを紹介してくれたのは……
成田由香利さん
なりたゆかり/フォトグラファー。撮影はファッション、料理など多岐にわたり、妊婦さんや赤ちゃんの撮影が得意。絵を描くことが大好きな小5と、剣道の稽古に明け暮れる小3の息子たちと暮らす。趣味は友だちとの散歩。美術館など目的地を決めて往復 10 キロほどを歩きながら、日々のことをおしゃべりする。
kodomoe webで「ママカメラマンのスマホ写真術」の連載も。

欠かせない食材はせり!

だまこ鍋は、秋田の名産である比内地鶏でだしを取り、ごはんで作っただまこと鶏肉、ゴボウや舞茸などを煮込んで作ります。野菜は、そのときにあるものを入れても構いませんが、絶対に欠かせないのはせりなのだそう。

せりは根の部分に強い香りと風味があるので、ぜひ根つきのものを買って。

「せりがないと、お鍋の味が変わってきてしまうので、これだけは外せません。仕上げの段階でせりをどっさり入れ、しんなりしてきたら食べごろです。また、比内地鶏のだしはコクがあり、うまみが強いのが特徴。手に入らない場合は普通の鶏ガラでひいたり、比内地鶏スープという市販品があるので、それを使ったりします。このスープはラーメンや煮物などに使ってもおいしいのでおすすめです」

雪深い秋田だからこそ、お鍋料理が活躍!

秋田県で育った成田さんの思い出のなかには、お鍋が登場するシーンがたくさんあるといいます。そのなかでも興味深いのが、小学校のときにあった「なべっこ遠足」なるもの。

見晴らしのいい山の上で食べるなべっこ遠足の豚汁は格別!

「秋になると、縦割りの班でそれぞれ鍋料理を決めて山の上で作るんです。ひとりひとりが『わたしはじゃがいも、ぼくはにんじん』というふうに材料を持ち寄って、豚汁やカレーなどの大鍋料理を作りました。みんなで協力して作った鍋料理は特別においしくて。その思い出から、今でも秋らしくなってくると、山で豚汁を食べたいなあと思うんですよね。両親も山が好きなので、家族でもよく『なべっこハイキング』をしましたよ」

なべっこハイキングのようす。子どもたちも率先してお料理。

帰省したときに、実家の前で作った大きなかまくら。いてつく寒さにお鍋が染みる。

子どもとだまこを作ってみよう

さて、まずはなんといってもだまこを作らないとはじまらない!ということで、子どもとだまこ作りをしてみました。成田さんのお話では、ごはんに片栗粉を混ぜて作ると、煮崩れしにくいのだそう。

「炊き立てのごはんをすりこぎで潰していくのですが、完全に潰さず、お米の粒々を感じるくらいの “半殺し”にします。味はきりたんぽと同じなのですが、一から作ろうと思うと時間がかかるので、きりたんぽは特別な日のごちそう。その日常バージョンがだまこ、という感じだと思います。秋田の方言では、小さくてかわいいものに“っこ”をつける習慣があり、会話の中では“だまっこ”と呼んでいます」

子どもの手のひらサイズにぴったりくらいで作ると、かわいらしいだまこに。

きりたんぽのように焼き色をつける人もいるそうなので、軽く炙ってみました。

忙しい日常の中では、こうして一緒に台所に立つ時間をそんなに持てないもの。日々の中には取り入れられなくても、ときどきのこういう時間が思い出になっていくのかもしれません。
「子育てをしていると、遠くへ旅行したり何かを買ってあげたりすることより、一緒にごはんを作った思い出や、小さな日常の一コマが案外記憶に残っていたりするんだなあ、と気づかされたことが何度もありました。今はこんな時期ですし、なかなかお出かけもできないけれど、一緒に何かして楽しむことで、充分子どもたちに愛情は伝わるのだと思います」

身体の芯に染み渡るやさしいおだし
だまこ鍋の作り方

材料(4人分)

ごはん……300g(お茶碗2杯分)
片栗粉……小さじ1
鶏もも肉……500g
舞茸……1パック
長ネギ……2本
せり……2束
ごぼう……1本
鶏がらスープ……1L
淡口しょうゆ……大さじ3
みりん……大さじ3
酒……大さじ3
塩……小さじ1〜

作り方

1.まずは下準備。
・ごはんに片栗粉を混ぜ、直径4cmくらいに丸める。
・鶏肉は一口大に、舞茸は小分けにする。長ネギは斜め切り、せりは食べやすい長さに切る。
・ごぼうは斜め切りにして水にさらしておく。
2.鍋に鶏がらスープと調味料を入れ、鶏肉、ごぼう、だまこを入れてひと煮立ちさせる。
3.鶏肉に火が通ったら、舞茸や長ネギを入れ、最後にせりを入れる。

 

ヒトクチメモ

はじめてのだまこ作りに、「おはぎ?  おもち?」と、我が子は興味津々。半分だけ潰すことを半殺しと言うんだよと説明しながら、やわらかくなったごはんをこねこね。泥だんごを作る要領で、6歳の息子にもじょうずに作ることができました。作るところから参加できる料理はきっと子どもの記憶にも残り、おいしさも2倍になるはず。大人の味かな? と思ったせりも、「意外とおいしい!」とパクパク。そして比内地鶏のおだしが染みただまこがまたおいしい! 成田さんには、だまこが汁気を吸った2日目もおいしいと教えてもらいましたが、あっという間に売り切れてしまったので、次回はだまこを多めに作ろう!と思いました。

冬の長い夜には、家族でお鍋を囲むのがぴったり。滋味に富むおだしもじっくり味わいながら、温かい時間を過ごしてくださいね。

吉川愛歩
よしかわあゆみ/食のライター・料理家
13歳と5歳の母。暮らしと食のコンテンツ制作に携わり、執筆と料理の仕事をしている。『メスティンBOOK』(山と渓谷社)や『キャンプでしたい100のこと』(西東社)などのレシピ監修も行っている。
Instagram : @yoshikawaayumi

 

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