茶色いごはんを「さくら色」って呼ぶ静岡人のポジティブさが好き。「さくらごはん」のレシピ【おうちでカンタン!郷土ごはん・4】
子育て中は台所仕事がままならないことって、たくさんありますよね。おいしくて栄養のあるものを食べさせてあげたいけれど、とにかく料理する時間がない! レパートリーもマンネリ化! そんなときのお助けメニューにできる“郷土料理”を、さまざまな地域で育ったママたちに教えていただきました。
びっくりするほど簡単で恐縮です!
静岡県・さくらごはん
静岡県の郷土料理として地元で親しまれている「さくらごはん」。お酒とおしょうゆを入れて炊き上げるごはんは、給食にも登場するほど静岡県ではよく知られたメニューなのだそう。特筆すべきは、やはり香り。炊いている間も、待ちきれないほどのおいしそうなにおいがしてくるんです。
「給食にさくらごはんが出る日は、学校中にいい香りが広がって、子ども心にとてもうれしかったものです。いつもの白いご飯が色つきに変わるだけで、特別感が味わえますよ」
今回、郷土ごはんを紹介してくれたのは……
asaco さん
あさこ/モデル・child at heart! 編集長。静岡県浜松市生まれ。13歳、11歳、7歳、3歳の子がいる。モデルとして広告やCMに出演する他、パートナーの平床政治さんとケータリング業「マフィオ」を展開。最近は「child at heart!」という子育てサイトを立ち上げ、育児情報を発信するなど多方面で活躍している。
簡単=手抜きじゃない! シンプルごはんで特別感を
学生時代に静岡県浜松市から上京してきたasacoさんは、今や4児のお母さん。そんなasacoさんから聞くと妙に納得してしまうのが、「手の込んだ料理が子どもウケがいいとは限らない!」ということ。
「我が家でも、“今日はめちゃくちゃがんばった!”というごはんを並べることもありますが、実は切っただけのトマトや蒸しただけのとうもろこし、茹でただけの枝豆、ストーブに載せて焼いただけの焼きいもなんかの方が、子どもたちの食いつきがいいということは多々あります。子どもが喜ぶポイントって、“手が込んでるかどうか”ではなかったりするんですよね」
asacoさんの心に残っている郷土ごはんも、そんな簡単にできるレシピです。
「さくらごはんは、ただただお酒とおしょうゆを入れて炊いただけのごはん。でも、それだけのことが子ども時代には特別なごはんでした。香ばしくて、やっぱりいつもの白いごはんとは違うときめきがあって。だから料理が苦手な人や、今日は手抜きになっちゃったなっていう人も落ち込まないで、むしろ胸をはってシンプルなごはんを楽しんでほしいです」
サクラサクにかけた受験祈願ごはん
asacoさんが浜松を離れたのは18歳のとき。ひとり暮らしをはじめたときにも、ふと地元の味を思い出して「さくらごはん」を作っていたのだとか。
「給食で食べたのと実家でたまに出たくらいの記憶しかないのですが、当時お金もなくてちょっとでも食費を浮かせたかったので、よく作っていました。おかずなしでも満足できるおいしさなのがいいですよね。さくらごはんの由来は、ごはんがさくら色だからということなんですが、茶色いごはんをさくら色って呼ぶ静岡の人のポジティブさが好きです。そのネーミングから、受験祈願に炊くご家庭もあるみたいですよ」
スイッチポンでしみじみおいしい
さくらごはんの作り方
材料(4人分)
白米……2合
水……340ml
料理酒……大さじ2
しょうゆ……大さじ2
作り方
1.米を洗い、分量の水を入れて30分浸水させる。
2.料理酒としょうゆを入れて、炊飯器の普通モードで炊く。
3.炊き上がったら天地を返して器に盛る。
ポイントは、使う調味料。「料理酒」には、さまざまな添加物が含まれているものがあります。味が変わってしまうので、なるべく添加物の少ないものを選びましょう。また、料理酒にはあらかじめ3%の塩分が含まれています。代わりに日本酒を使う場合は、ふたつまみほどの塩を加えてみてください。
「さくらごはんをベースに、チャーハンや混ぜごはんにするのもおすすめです。ごはんに味がついているので、材料を混ぜるだけでまた違ったアレンジができますよ」
試食メモ
ごはんにお酒とおしょうゆ。そう聞いたときは、たぶんこんな味だろうな、と想像していたのですが、実際に食べてみたら想像以上のおいしさで本当にびっくり。お酒とおしょうゆしか入れていないのに、なぜだか、おだしを飲んだような旨味があり、あまりに満足感の高いメニューでした。はじめに書いたとおり、炊飯器がふつふつしはじめたころからものすごくいい香りがしてくるのにも、ワクワクしますよ!
さくらごはんを夕飯にするなら、あとは具沢山のお味噌汁とお漬物やサラダがあれば充分! 代わりにごはんをいっぱい炊いておくのがオススメです。海苔で巻いたり、おにぎりにしたり、もしかするとここに熱々のお茶をかけていただくのもおいしいかもしれません。炊き上がったあと少し保温にしておくとお焦げができるのも、嬉しいポイントです。
吉川愛歩
よしかわあゆみ/食のライター・料理家
13歳と5歳の母。暮らしと食のコンテンツ制作に携わり、執筆と料理の仕事をしている。『メスティンBOOK』(山と渓谷社)や『キャンプでしたい100のこと』(西東社)などのレシピ監修も行っている。
https://www.instagram.com/yoshikawaayumi/