2025年5月14日

俳優・芳根京子さんインタビュー「引っ込み思案で友達ともうまく話せなかった子が、俳優になると決心」

明るく健気な役から鬼気迫るサイコパスの役まで幅広い演技力が魅力の俳優・芳根京子さん。幼い頃は「友達ともびくびくしながら会話していた」というほど引っ込み思案だった彼女が、人気俳優になるまでの心境の変化、そして「恩師」との出会いを伺いました。

よしねきょうこ/俳優。1997年東京都生まれ。2013年ドラマ『ラスト♡シンデレラ』で俳優デビュー。2016年NHKテレビ小説『べっぴんさん』でヒロインの坂東すみれを演じ、話題に。ドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)に出演中。

Instagram:@yoshinekyoko

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引っ込み思案で、
控室にも入れずうじうじしていたことも

――デビュー前は、とても引っ込み思案だったそうですね。恥ずかしがり屋だった少女が、どのように演技を楽しめるようになっていったのでしょうか?

デビューしてからも撮影現場でキャスト控室に入れず、マネージャーさんと一緒に廊下で待機していた思い出があります。どんな話をしていいのかわからなくて、自分から話しかける勇気もありませんでした。マネージャーさんから「そんなんじゃだめだよ!」と叱られても「本当に無理なんです……」と泣きついてました。

小学生の時は、友達とコミュニケーションをとるのも恥ずかしかったのをよく覚えています。お楽しみ会などで先生に「仲が良い友達とグループを組みましょう」と言われるのが苦手で……。「決めてもらったほうが楽なのに」って、うじうじしていました。

「お芝居するのが楽しい」と感じられるようになったのは、NHK連続テレビ小説『花子とアン』で仲間由紀恵さんの娘役を演じてさせてもらってから。今までは、覚えてきたセリフを発表するのがやっとだったんですが、この時から少しずつに楽しめるように。

オーディションに合格してこの役を演じられることになったので、自信がついたのかもしれません。そこから徐々に主役を任せてもらえることになり、「作品の中心に立たせてもらえているんだから、責任をもたないといけない!」と、迷いが消えていきました。そこからは、監督や共演者の方々との会話も自然と出来るようになっていきましたね。

――徐々に、人前に立つのが楽しくなっていったんですね。

そうですね。大きなきっかけがあったわけでなく、グラデーションのように意識が変わっていきました。本当に引っ込み思案だったので、自分で何かを決めたり、選んだりしたことがない子だったんです。初めて自分の意思で決めたのが俳優という仕事だったので、引っ込み思案ながらもデビュー当初から「さまざまな役を演じてみたい」という気持ちは持っていました。

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――『kodomoe』のインタビューでは、皆さんに好きだった絵本をお伺いしています。小さな頃はどのような絵本を読んでいらっしゃいましたか教えてください。

一番印象に残っているのは佐野洋子さんの『おれは ねこだぜ』(講談社・版元品切れ)です。もともとは兄の本だったのか、物心ついた時には家にあって、一緒に暮らしていた祖母によく読んでもらっていました。たくさんのサバが猫を目がけて泳いでくる描写は今でも思い出します。すごいインパクトのある絵なんですよ! 

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器用な人間ではないからこそ、
対話を重ねていきたい

――今回出演される『先生の背中 〜ある映画監督の幻影的回想録〜』は、日本を代表する映画監督である、名匠・小津安二郎監督をモデルにした「先生」を巡る物語になっています。舞台となっている昭和30年代の雰囲気をどう感じていらっしゃいますか?

今回の舞台に出演させていただくことが決まり、小津監督の作品だけでなく同時代に撮られた映画などを拝見しました。今とは異なる斬新な撮り方に、新鮮さを感じることばかり。とても勉強になります。小津監督の作品は、女性を美しく撮っている印象があったので、今回その雰囲気が舞台でどのように演出されていくのか、楽しみです。

また、演出を行定勲さんが担当されるというのも、今作に飛び込んでみようと決めたきっかけの1つでもあるので、行定さんとたくさんコミュニケーションを重ねていきたいです。

――今回に限らず、芳根さんは監督や演出家の方々との対話を大事にされていると伺いました。

演技をするうえでわからないことやモヤモヤが残らないように、質問をたくさんすることは作品のためにも大切なことだと思っています。また、私がどういったタイプの人間なのかわかってもらえると、とても心強いです。自分のことをあまり器用な人間だと思っていないので、それを監督や演出家の方に理解してもらえると安心できるんですよね。なので作品以外のことを話す時間も大切にしています。

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セットアップ28,600円、インナー14,300円/ともにAMERI(AMERI VINTAGE お問い合わせ先 03-6712-7965)、その他 スタイリスト私物

――本作のように、芳根さんには恩師と呼べるような存在の方はいらっしゃいますか?

デビューの時から担当してくれていたマネージャーさんです。厳しく指導されましたし、何度も大喧嘩をしましたが、自分が年を重ねる上で真剣に怒るってすごく体力を使うことだって気付いたんです。目をつぶって見ない振りをした方が楽な場面ってたくさんあるじゃないですか。でもマネージャーさんは私のことを思っていつも本気で怒ってくれました。今、あの時にかけてくれた言葉を思い出して、やる気が出ることも多いんです。俳優としてやっていくために必要な、ちょっとやそっとじゃ負けない強いメンタルを作ってくれたと感じています。

INFORMATION

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パルコ・プロデュース2025
『先生の背中 〜ある映画監督の幻影的回想録〜』

名匠、小津安二郎監督をモデルにした「先生」と、彼を取り巻く5人の女性との物語。古き良き映画界への想いを重ね、そこに流れていた豊かな時間を“小津調”で、演劇作品として舞台上に紡ぎ出す。

出演:中井貴一 芳根京子 柚希礼音 土居志央梨 藤谷理子 升毅 キムラ緑子 ほか
作:鈴木聡
演出:行定勲

公演スケジュール
日時:2025年6月8日(日)~29日(日)
場所:東京都 PARCO劇場

日時:2025年7月5日(土)~7日(月)
場所:大阪府 森ノ宮ピロティホール

ほか福岡、熊本、愛知公演あり

詳しくはこちら stage.parco.jp/program/senseinosenaka

インタビュー/高田真莉絵 撮影/相馬ミナ スタイリスト/杉本学子(WHITNEY) ヘアメイク/猪股真衣子(TRON)

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