『とのさま1ねんせい』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第358回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。
『とのさま1ねんせい』
長野ヒデ子、本田カヨ子/作・絵 あすなろ書房 1430円
この春に小学校ご入学を迎えた皆さん、おめでとうございます。
新1年生は何でもピカピカ、家族もなんとなく晴れがましくてウキウキ。
でも、当の本人は今ひとつ盛り上がってないみたい?
なんてことも、ありますよね。
そんなお子さんとは、『とのさま1ねんせい』を一緒に読んでみませんか。
遊ぶことが何よりも大好きなとのさま。
「とのさま、おべんきょうの じかんです」
と家来たちがいくら言っても、
「べんきょうは いやだ」
と言って、けん玉に夢中。
「とのさま、もうすぐ1ねんせいです。
がっこうに いく よういを、してください」
と毎日言われても、
「いやじゃ いやじゃ。
1ねんせいは いやじゃ。
1ねんせいになんか、なりたくない!」
と、逃げだしてしまいます。
家来たちが必死で追いかけても、とのさまはすたこらさっさ。
お城のどこを探しても、見つかりません。
とのさまに振り回されて、家来たちはすっかりへとへと。
「とのさまは、どうして 1ねんせいが いやなのかなあ?」
「1ねんせいに なったら、
ともだちが いっぱい できるんだってよー!」
「1ねんせいに なったら、
おいしい きゅうしょくが、たべられるんだって」
みんなで学校のいいところを話しているうちに、家来たちは
「ぼくも 1ねんせいに なりたいな」
「わたしも!」「ぼくも!」
と大騒ぎ。
とのさまを探すのをやめて、入学準備を始めました。
そうなると、とのさまはつまらなくて、さみしくて、しょんぼり。
「だれも おいかけてくれない……」
と、とうとう泣いてしまいます。
大人はみんな学校を経験済みだけど、子どもにとっては全然知らない場所。
毎日することは、遊びじゃなくて、お勉強。
確かにとのさまでなくても、最初はとまどいますよね。
そんな時、こんな風に学校生活の「いいところ」「楽しいところ」に目を向けて、大人も自らワクワクしたら、お子さんの気持ちもちょっと上向きになるかもしれません。
とのさまを泣き顔から笑い顔に変えた家来たちの手腕、ぜひご覧くださいね。
天真爛漫でにくめないとのさまのファンになったら、シリーズの『とのさまサンタ』『とのさまぶたまん』もあわせてどうぞ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。