
『じっちょりんのたんじょういわい』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第359回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。
『じっちょりんのたんじょういわい』
 かとうあじゅ/作 文溪堂 1540円
 子育てが始まって、子どもと一緒に歩くようになると、道端にしゃがむことが多くなりませんか。
 子どもと同じ目の高さになると、今まで見過ごしていた道端の草花も、目に入るようになってきたり。
 なずなやかたばみ、自分が子どもだった頃にも見た草花に出会うと、懐かしさにちょっとほっとしたり。
 そんなステージの親子にちょうどおすすめなのが、道端に草花の種を植える小さな生きもの、「じっちょりん」のシリーズ。
 既刊の春夏秋冬のお話4冊に続けて、8年ぶりに登場した5冊目の最新刊、『じっちょりんのたんじょういわい』をご紹介します。
町の植え込みの片隅に暮らしている、とても小さなじっちょりん家族。
 パパじっちょりん、ママじっちょりん、おにいちゃんじっちょりん、いもうとじっちょりん。
 じっちょりんは花や葉っぱを食べますが、種だけは食べずにとっておき、道や壁のすきまに植えてまわります。
 ほら、道を歩いていけば、きゅうりぐさ、ほとけのざ、すみれ、前にみんなが植えた種が、かわいい花を咲かせています。
 「このはなびらを あつめたら、
  おいわいのケーキが すてきになるんじゃない?」
 と、いもうとじっちょりん。
 桜の花びらが舞い、道が花びらでいっぱいになる頃が、じっちょりんたちが生まれる季節。
 この頃には仲間の家族たちも集まって、大きな桜の木の下で「たんじょういわい」をするのです。
 今年はママじっちょりんのおなかにも、赤ちゃんがいます。
 桜の木の下をめざして進み、無事にたどり着いたみんなは、おいわいのケーキや赤ちゃんのベッドの準備を整え始めます。
小さいじっちょりんの目から見た、地面から見上げる町の風景は、すべてがクローズアップ。
 うんと近寄って見る小さな草花たちは思わぬ愛らしさで、花や葉っぱの数かたち、それぞれ違う個性に驚かされます。
 小さな体が風に飛ばされそうになっても、みんなで手をつないで
 「ゆっくりでいいから、じめんに あしを
  しっかりつけていけば、だいじょうぶだよ!」。
 パパじっちょりんの言葉が、同じ保護者として、ぐっと胸にしみてきます。
 「じっちょりん」を一度読んでからは、道端のすきまに草花を見ると「これはきっと、じっちょりんが植えた種から……」と思ってしまうはず。
 親子でそんなうれしい合言葉が生まれる、一年を通じて楽しめるシリーズです。
選書・文 原陽子さん
 はらようこ/フリー編集者、司書、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。


































