2022年11月16日

『にんじんようちえん』【今日の絵本だより 第332回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『にんじんようちえん』
アンニョン・タル/作 ひこ・田中/訳 ポプラ社 1650円 

11月16日は、幼稚園記念日。
今回は、今年の春に発売になった韓国の翻訳絵本、『にんじんようちえん』をご紹介します。

初めて「にんじんようちえん」にやってきた、赤いトゲトゲのうさぎの子。
担任の先生は、見上げるほど大きな大きなクマせんせい。
声も大きくて、とっても力持ち。
幼稚園では、つみきにすべり台にまねっこダンス、いろんなことをするけれど、トゲトゲのうさぎの子にはどれも面白くありません。
朝になって、
「ママ きょうは
 ようちえんに
 いきたくない」
と言っても、下の子たちのお世話で忙しいママには聞き入れてもらえません。
送りの車の後ろの席で、ぶ然とした様子のうさぎの子。

だけど、今日はクマせんせいが、粘土で作ったゾウを
「うわあ
 カッコイイよ!」
とほめてくれました。
他の子がおもちゃを貸してくれなかったら、そばに来て
「なかよく
 じゅんばんに
 あそぼうよ」
と言ってくれました。
トイレで困っていたら、みんなに内緒で、ピンチを救ってくれました。

クマせんせいのことが、大好きになったうさぎの子。
今度は朝から一生懸命かっこいい服を探して、送りの車の中で
「ママ おくれちゃうよ
 はやくして
 はやくして」。
絵を描く時も、給食の時間も、外遊びでも、クマせんせいに「みてみて!」アピールが止まりません。

あることをきっかけにくるっと変わる気持ち、それも成長の1ページ。
好き勝手なことを話す(いい意味で!)元気な園のお友達や、3人きょうだいのお世話に大変そうなママとパパ、子育て世帯には「そうそう!」とうなずける「いい味」がいっぱいつまった絵本です。
いい味といえば、忙しい一日が終わった後の、クマせんせいの思い出し笑い。
思い出し笑いって、子どもと一緒に過ごす日々の中で、ふっともらえるごほうびみたいですよね。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

 

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