『おはよう! げんき? ありさん どんどん のぼったら』【今日の絵本だより 第298回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おはよう! げんき? ありさん どんどん のぼったら』
村上勉/作 講談社 1650円
気がつけばあっという間に、今年の梅雨が明けてしまいました。
観測史上最も早い梅雨明け、最も短い梅雨だったそうですね。
そして6月だというのに早くも容赦ない暑さがやってきましたが、ここはひとつ、夏の始まりにあたって気持ちがさわやかに、前向きになりそうな1冊を。
『おはよう! げんき? ありさん どんどん のぼったら』をご紹介します。
絵本を開くと、縦長の見開き画面。
緑の立派な茎の根元で、ありさんが元気に
「おはよう!」
茎に集まっているかえるやあおむしたちが、ありさんに尋ねます。
「おはよう ありさん!
どこ いくの?」
するとありさんは、
「ちょっと そこまで」。
ページを縦にめくったら、ありさんはもう緑の茎を上へとのぼっています。
かたつむりの行列に
「おはよう! かたつむりさん!」
「おはよう ありさん!」。
どんどんのぼったら、ひらひら舞うちょうちょたちからごあいさつ。
「ありさん おはよう!」
「おはよう ちょうちょさん!」。
またどんどんのぼったら、糸のおうちを見つけて声をかけます。
「おはよう くもさん!」
「おはよう ありさん!」。
緑が香るような立派な茎を、上へ上へとのぼっていく気持ちよさ。
そこに集まる生きものたちと交わす、元気なあいさつも清々しく。
虫好き、小さな生きもの好きなお子さんなら、ありさんはもちろん、かえるやあおむし、ばったやかまきり、生き生きと表情豊かなみんなの様子を、すみずみまで楽しむことでしょう。
「おはよう!」を繰り返しながら、まっすぐにのぼり続けるありさんを、一番てっぺんで待っているのは……?
画面にあふれる生命力、まぶしい輝き。
夏の幸福が凝縮されているような一冊です。
同じ村上勉さんの絵による50年来のロングセラー、『おおきなきがほしい』(佐藤さとる/文 偕成社)と一緒に、絵本を縦にめくって読むワクワクを味わうのもおすすめです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。