『あまがえるのかくれんぼ』【今日の絵本だより 第297回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『あまがえるのかくれんぼ』
たてのひろし/作 かわしまはるこ/絵 世界文化社 1320円
発売中のkodomoe6月号「季節の絵本ノート」では、梅雨にちなんでカエルの絵本を5冊紹介しています。
今回はその中からこちらの1冊、『あまがえるのかくれんぼ』をご紹介します。
小さなあまがえるの、ラッタ、チモ、アルノー。
仲良しの3匹は、今日も池のそばの草むらでかくれんぼをして遊びます。
鬼はアルノー。
帽子を目深にかぶって目隠しをして、
「もう いいかい?」
「まあだだよー」
チモはすぐに見つかってしまいますが、木のくぼみにかくれたラッタはなかなか見つかりません。
「おーい ラッタ、どこに いるの?」
と心配されて、
「ぼくは ここだよ」
とラッタが飛び降りたら、びっくり!
ラッタの体が、黒っぽい変な色に変わっています。
アルノーとチモが一生懸命洗ったりこすったりしても、きれいになるどころか、ラッタの体はどんどん黒っぽくなっていきます。
気がつけば、アルノーとチモの体の色も変わってきて……、どうしよう?
写実的なのに自然な擬人化でかえるたちの姿を描く画家のかわしまはるこさんは、あまがえるを何年も飼育して、毎日観察を続けているそうです。
作者のたてのひろしさんはあとがきで、かわしまさんの絵に「ビアトリクス・ポターの描いたピーターラビットを思い起こします」と語っています。
たてのひろしさんも生物画家であり、『しでむし』『がろあむし』(偕成社)など、息をのむほど細密な絵で虫たちの生きる姿を描いてきました。
本作の続編の『あまがえるのぼうけん』(世界文化社)では、愛らしいだけではない、「食べる」か「食べられる」かの日々を生きている3匹の姿が描かれています。
東京・大田区のお茶が飲める絵本の店・TEAL GREEN in Seed Villageでは、2022年6月22日(水)〜7月3日(日)まで「舘野 鴻 もうひとつの世界 たてのひろし・作 かわしまはるこ・絵 『あまがえるのかくれんぼ*ぼうけん』絵本原画展」を開催中。
シリーズ2冊のみずみずしい原画が、間近で見られる貴重な機会です。
詳しくはお店のHPをご覧ください。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。