『ひなまつりの ちらしずし』【今日の絵本だより 第276回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ひなまつりの ちらしずし』
宮野聡子/作 講談社 1540円
明日から3月、ひなまつりももうすぐですね。
発売中のkodomoe2月号連載「季節の絵本ノート」でもひなまつりの絵本を5冊紹介していますが、その中から今回はこちらをピックアップ。
『ひなまつりの ちらしずし』をご紹介します。
今日はきみちゃんのおうちで、ひなまつりのパーティーです。
お友達がやってくる前にお部屋を飾りつけて、準備万端のきみちゃん。
次は、お母さんと台所でちらしずしを作ります。
お母さんが飯台いっぱいの温かいごはんに合わせ酢を混ぜたら、きみちゃんはうちわであおぐお手伝い。
上に飾る具材は、なのはな、れんこん、さやえんどう、えび、他にもたくさん用意されています。
「この ざいりょう、みんな かざるの?」
と聞くきみちゃんに、お母さんは
「そうよ。ひとつひとつの ざいりょうに、いみが あるのよ。」
と、歌いながら教えてくれました。
「はるの のはらに なのはなさん
しあわせ みえるよ れんこんさん
くるくる はたらく おまめさん
じょうぶな えびさん ながいきさん!」
なるほど、ちらしずしにもおせちのように、縁起のよい食べ物が使われているんですね。
子どものすこやかな成長と幸せな未来を願うのは、いつの世も、どこの国でも同じこと。
やってきたお友達に
「ちらしずしの ざいりょうには、
ちゃあんと いみが あるんだよ。」
と、早速歌って教えてあげるきみちゃん。
ちらしずしに込められた願いが、こうしてまた次の世代に伝えられていく。
微笑ましくも、うれしいことです。
『ひなまつりの ちらしずし』は、「行事と食べもののよみきかせ絵本」シリーズ(講談社)の一冊。
きみちゃんは他にも『えんそく おにぎり』『おぞうにくらべ』で登場しています。
どのお話も素直で明るいきみちゃんと優しいお母さんのやりとり、おいしそうな食べ物に、ほっこり温かい気持ちになりますよ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。