『ゆめちゃんのハロウィーン』【今日の絵本だより 第246回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ゆめちゃんのハロウィーン』
高林麻里/作 講談社 1650円
今年ももうすぐ、ハロウィーン。
今回ご紹介する『ゆめちゃんのハロウィーン』は、アメリカ・ニューヨークのハロウィーンを描いた作品です。
ゆめちゃんは、幼稚園の年長組。
一年前に家族でニューヨークに引っ越してきました。
去年は引っ越してきたばかりで何もしなかったけど、今年のハロウィーンは、ゆめちゃんもお母さんもワクワク。
一緒に色画用紙でおばけやこうもりを作り、窓や玄関に飾ります。
お父さんも大きなオレンジ色のかぼちゃで「ジャック オー ランタン」を作り、火を灯しました。
幼稚園ではみんな、ハロウィーンの日に何になるかの話でもちきり。
なかよしのエレーナは「ひょう」、ポールは「しょうぼうし」、他のみんなも「ミイラ」「てんとうむし」「にんじゃ」「クレヨン」……、何になってもOKみたいです。
ゆめちゃんは、魔女になることにしました。
そうしたらお母さんも、魔女になるんですって。
「ハロウィーンは おとなから こどもまで、みんな たのしむ ひよ」
と、お母さんは早速ミシンで、魔女のドレスを縫い始めます。
さあ、いよいよハロウィーンの日。
魔女のゆめちゃん、ひょうのエレーナ、消防士のポールは、かぼちゃのバッグを手にさげて
「トリック オア トリート!」
とご近所を回ります。
呼び鈴を鳴らすと、ドアを開けてニコニコとお菓子をくれる大人たち。
“おばけやしき はいって!”
とドアに書いてある家に、3人で入ってみると……。
この絵本の大きな魅力は、ニューヨーク在住の作者が見た本場のハロウィーンの様子が、読者と同じ年頃の、日本人のゆめちゃんを通して描かれているところ。
愛らしく親しみやすい絵もあいまって、ハロウィーンというお祭りの全体像が、すとんと腑に落ちるんです。
個人的には、巻末解説「おうちの方へ」にあった「収穫を感謝し、祖先の霊を祀り、ランプやちょうちんに火を灯すという風習は、なにか日本のお盆とも重なります。」という一節が、「ああ! 確かに!!」と目から鱗でした。
次回も続けて、ハロウィーンの絵本をご紹介します。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。