『るーくんのベッド』【今日の絵本だより 第234回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『るーくんのベッド』
はせがわさとみ/作 アリス館 1210円
少し先ですが、9月3日はベッドの日。
「good sleep day」の「グッドスリープ」→「グッスリ」→「9」と「3」で9月3日にと、全日本ベッド工業会が制定した記念日なのだそうです。
それにちなんで今回は、ベッドが舞台のお話、『るーくんのベッド』をご紹介します。
夜になって、空にはお月さまとお星さま。
みんなはもう眠る時間。
でも、るーくんは
「ぼく、まだ ねむたくないよ」
と、元気にベッドからおりてきます。
すると、
「おや、からっぽの ベッド みーつけた!
ずっと ベッドで ねてみたかったんだ」
と、おもちゃの棚から緑のかいじゅうが飛び出して、るーくんのベッドに向かいました。
それを見て、
「あっ! いいな いいな。ぼくらも ベッドで ねよう」
と、丸や三角、四角のつみきたちもやってきます。
続けて、
「ぼくらも いれて」
と、クレヨンやノートも。
るーくんのベッドは、あっという間におもちゃたちでいっぱいです。
「るーくん、ねないの?」
とみんなに聞かれても、
「ぼく まだ あそべるよ。あそぼうよ」
と頑張る、るーくん。
するとそこへ、
「そうだ、るーくんが こないなら……」
と……?
子どものなかなか寝ない問題、本当に悩ましいですよね。
おやすみ系の絵本を何冊読んでも、まったく効果のなかった我が家の日々を思い出します。
毎日苦戦続きだったので、おやすみ絵本は「半分寝ながら読んでも、そのまま寝落ちしても大丈夫そうな空気感のもの」が私的基準なのですが、『るーくんのベッド』は、まさにそんな一冊。
はせがわさとみさんの柔らかな絵と言葉が、一日の終わりの寝室に、優しい空気を連れてきてくれます。
「寝ようね」という圧ではなくて、みんなみんな「眠たいね」という、すこやかな解放感。
そう、読み終えた後にたとえすんなり眠くならなくても、親も子も、いろいろ許されるような温かさ。
静かな優しさに満ちたはせがわさとみさんの絵本は、こちらもおすすめです。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。