『どんなかんじかなあ』【今日の絵本だより 第174回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『どんなかんじかなあ』
中山千夏/文 和田誠/絵 自由国民社 本体1500円+税
12月3日から12月9日までの一週間は、障がい者週間。
「障がい」と聞くと、一瞬身構えてしまいますか?
そんな緊張をふっとほどくきっかけになるような一冊、『どんなかんじかなあ』をご紹介します。
ぼくの友だちのまりちゃんは、目が見えない。
見えないって、どんなかんじかなあ。
ぼくは考えます。
「しばらく めを つぶっていたら わかるかもね。
うん、めを つぶっていてみよう。」
すると、
「なんてたくさん
いろいろな おと!!」
目を開けていた時には気づかなかったたくさんの音が、耳に届いてきました。
驚いたぼくは、まりちゃんに伝えます。
「みえないって すごいんだね。
あんなにたくさん きこえるんだものね。
みえるって そんだね。
ちょっとしか きこえてないんだものね。」
まりちゃんは、笑って言いました。
「ひろくんって、かわってる」
もうひとりの友だちのさのくんは、耳が聞こえない。
きこえないって、どんなかんじかなあ。
耳栓でしばらく耳をふさいでみたら、今度は、たくさんのものが見えてきました。
別の友だちのきみちゃんは、お父さんもお母さんもいない。
それは試してみるわけにはいかないけれど、どんなかんじかなあと、一生懸命考えてみます。
自分と何かが違う友だちの気持ちを、自分の頭と心で精一杯考えてみる「ぼく」、ひろくん。
ラストには、あっと驚く事実が待っています。
どうして主人公のひろくんが、こんなにじっくりと、いろいろなことに考えをめぐらせるのか。
「どんなかんじかなあ」という言葉から始まる、最初の一歩。
ひととき目をつぶったり、耳をふさいでいみることで、二歩、三歩進むこともできる。
親子で一緒に読みたい、そしてひろくんのように試してみたい、「障がい」という言葉のイメージと、物の見方が変わる一冊です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。