『ぼくのジィちゃん』【今日の絵本だより 第75回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ぼくのジィちゃん』
くすのきしげのり/作 吉田尚令/絵 佼成出版社 本体1300円+税
9月16日は、敬老の日。
おじいちゃんを描いた絵本はたくさんありますが、その中でも今回はあっと驚く、スーパーおじいちゃんの絵本をご紹介します。
それは、『ぼくのジィちゃん』。
明日は、小学校の運動会。
クラスで一番走るのが遅いぼくは、ゆううつ。
父さんはPTAリレーのアンカーだけど、きっとぼくはビリに決まってる。
夜には、ジィちゃんも田舎から応援にやってきました。
ウサギさんのTシャツを着て、
「ほーら ヒロシくん、ウサギさんでちゅよ」
なんて。
ぼくは思います。
「なんだか、ぼくの ジィちゃん かっこわるい」。
翌日の運動会での徒競走、やっぱりぼくはビリでした。
みんなでお昼を食べていたら、父さんに突然仕事の連絡が入り、どうしても会社に行くことに。
これからPTAリレーなのに、どうしよう。
困り顔の選手たちのところへ、ジィちゃんがやってきて、手をあげました。
「あの〜、こまってるのなら、 わしが でましょうか」
ウサギさんのTシャツにすそまくりのズボンで、トラックに向かうジィちゃん。
友だちにもからかわれて、ぼくはすっかり不機嫌です。
ついにジィちゃんにバトンが渡り、みんなからため息がもれた、そのとき……。
そこから先は、まるでドラマを見るような、手に汗握る展開。
優しそうなジィちゃんから一転しての、力強さと疾走感。
迫力と感動のゴールシーンは、何回読んでも胸が熱くなります。
(ウサギさんにも注目!)
そして本を閉じた裏表紙の絵にも、胸がじーんとなります。
長年小学校の先生を務めていた作者のくすのきしげのりさんは、小学生が主人公の絵本をたくさん書いています。
お子さんが入学前のご家庭だと、なんとなく「入学したら、絵本は卒業」というイメージもあるかもしれません。
でも小学校に行ってからも、こんなふうに絵本が子どもたちの気持ちに寄り添い、背中を押してくれること、知って頂けたらと思います。
(むしろ絵本だからこそ寄り添える、伝えられるテーマも多いと思うのですよ……。)
次回も敬老の日にちなんで、おばあちゃんの絵本をご紹介します。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。