2019年9月12日

『うちゅうはきみのすぐそばに』【今日の絵本だより 第74回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『うちゅうはきみのすぐそばに』【今日の絵本だより 第74回】の画像1『うちゅうはきみのすぐそばに』
いわやけいすけ/文 みねおみつ/絵 福音館書店 本体1400円+税

9月12日は、宇宙の日。
前回に続けて今回も、宇宙の絵本をピックアップします。
「宇宙」と聞くと、とてもはるか遠くにあるもの、まったく手の届かない場所、そんな気がしませんか?
『うちゅうはきみのすぐそばに』は、そんな概念をきれいに取り払ってくれる一冊です。

ある日の公園で、子どもが持っていた風船が、手から離れてしまいました。
風船は、空へ昇っていきます。
マンションの高さへ。
鳥が飛ぶ、ビルの最上階の高さへ。
高いタワーと同じ高さへ。
ヘリコプターと同じ高さにも、風船は昇っていきます。
さらに高い雲の上は、どんな世界なのでしょう。
そこは、いつでも晴れた空。
そして、地上から100km、ここから上が宇宙です。

優しい語り口の文章を追って、ページをめくるたびに地上から少しずつ上へ、上へ。
いつしか地球をはるかにのぞむ宇宙まで、遊覧旅行を楽しめます。
作者のいわやけいすけさんは、風船を使って宇宙からの撮影を行っている研究者。
巻末のあとがきに、スイカを地球に見立てると、宇宙ステーションはこれくらいの位置にある、と記しています。
その説明が、まさに絶妙! ぜひご一読ください。
『うちゅうはきみのすぐそばに』というタイトルが、「なるほど!」と腑に落ちるのです。
これからはスイカ一玉を見るたびに、「宇宙ステーションはこれくらいのところに……」と思い出しそうな予感がします。
子どもの内からそんなふうに、気軽に宇宙に親しめたら、素敵ですよね。

宇宙がより身近になるはずの未来。
その時代に生きる子どもたち。
一冊の絵本が、お子さんと宇宙との距離をぐっと縮めてくれるかもしれません。
お子さんだけでなく、宇宙のことはちんぷんかんぷん、という大人にもおすすめです。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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