2019年6月26日

『マルマくん かえるになる』【今日の絵本だより 第59回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『マルマくん かえるになる』【今日の絵本だより 第59回】の画像1『マルマくん かえるになる』
片山令子/文 広瀬ひかり/銅版画 ブロンズ新社 本体1400円+税

前回に引き続き、今回も雨の季節に読みたい絵本をご紹介します。
小さなかえるの子のお話、『マルマくん かえるになる』。

かえるになりたてのマルマくんは、他の子のようにすいすい泳げません。
おしりには、まだ大きなおっぽがついています。
みんなにからかわれて泣いているところに、がませんせいがきてくれました。
マルマくんと同じように、おっぽが残っていてうまく泳げない子もいます。
体の黄色いキーヨくんと、赤いルビーちゃん。
がませんせいが特別に、次の日から3人に泳ぎ方を教えてくれることになりました。
その夜、おうちで明日の授業の用意をしながら、がませんせいはつぶやきます。
「こんな ふしぎな ときがあるのは
 かえるだけなんだ。ゆっくりだって いいんだよ」

「ゆっくりだって いいんだよ」。
がませんせいのこの言葉が、ふとしたときに胸に浮かぶことがあります。
成長のペースは人それぞれ、だけどまわりとくらべられてしまう。
何かができても次のこと、また次のことを期待される子どもたち。
緊張の毎日の中で、大人にこんな言葉をかけてもらえたら、どんなにほっとするでしょう。
がませんせいが貸してくれたうきわをつけて、泳ぎの練習にはげむ3人。
ゆっくりと、少しずつ、立派なかえるに近づいていきます。

ここまで書いてきて、はたと気づきました。
そうか、この絵本のタイトル。
『おっぽの のこった マルマくん』とか、『うまく およげない マルマくん』でなく、
『マルマくん かえるになる』。
マルマくんもキーヨくんもルビーちゃんも、必ずかえるになる。
ゆっくりだけど、必ずなる。
「だから、大丈夫」という確かな気持ちが、心の底の方からむくむくとわきあがってきます。
そして、3人をいつも見守っていた、マダムかたつむりの言葉も思い出されます。
「ゆっくりって すてきなことね」。

鮮やかな銅版画で描かれる池の風景は、まぶしい光に満ちていて。
雨の季節に合わせてご紹介しましたが、成長する子とそのそばにいる大人に、一年中おすすめの一冊です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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