『かさとながぐつ』【今日の絵本だより 第58回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『かさとながぐつ』
二宮由紀子/文 市居みか/絵 瑞雲舎 本体1300円+税
梅雨の季節にぴったりなのは、やっぱり雨降りの絵本ですね。
雨の日がうんと楽しくなる、ごきげんな新刊絵本が登場しました。
『かさとながぐつ』です。
玄関の先でわくわくしている、黄色いかさ。
今日は、はじめておうちにながぐつがやってくるんですって。
「ながぐつって、どんな かおかな?
ぼく、ともだちに なれるかな?」
そこへ、
「こんにちは」
「こんにちは」
とやってきたのは、赤いながぐつ。
ふたりとも、そっくりな姿をしています。
さあ、みんな待望の雨が降ってきた日、かさもながぐつも一緒におでかけです。
「わあい」
「わあい」
と、ながぐつ。
「いあわ」
と、かさ。
そうか、いつも柄が上でスタンバイしているかさは、開いて使われるときは、逆立ちになっているんでですね。
(表紙のかさの顔に注目。)
「ぽつん、ぽつん」
「ぽつん、ぽつん」
足元でながぐつが言えば、上からかさが
「んつぽ、んつぽ」。
「ばっしゃ、ばっしゃ」
「ばっしゃ、ばっしゃ」
と言えば、
「しゃっば、しゃっば」。
どんどん激しくなる雨の中、かさとながぐつのかけあいも、どんどんもりあがって、大きな声になっていきます。
そうしたら、あっ、かさが……。
うん、これは、子どもと声を出して読みあうと、絶対楽しい絵本ですね。
親子で逆さ言葉を唱えている内に、クスクス笑いがこみあげそう。
大雨の中はしゃいで歩いて、かさもながぐつもどろどろでずぶぬれになっても、読後はなんだかとっても爽快感。
次の雨降りの日には、親子で
「わあい!」
「いあわ!」
と真似したくなってしまうかも。
なるほど、心に残るワクワク感には、ピンクの表紙が似合いますね。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。