『にゅうしちゃん』【今日の絵本だより 第54回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『にゅうしちゃん』
minchi/作・絵 岩崎書店 本体1200円+税
6月4日は、虫歯予防デー。
この日から6月10日までの一週間は、歯と口の健康週間でもあります。
歯をテーマにした絵本も、ロングセラーをはじめ数多くありますが、今回は歯の絵本界(?)の新星、ピンクのカバーもキュートな『にゅうしちゃん』をご紹介します。
赤ちゃんのおーちゃんのおうちに、やってきたのは「にゅうしちゃん」。
「はじめまして
こんにちは
にゅうしちゃんです」
窓辺で礼儀正しくごあいさつする、なんともかわいい、にゅうしちゃん。
にゅうしちゃんがやってくると、おーちゃんはごはんやおかしも食べられるようになります。
でも、にゅうしちゃんに食べかすがつくと、たくさんのミュータンスちゃんがやってきます。
小さなミュータンスちゃんたちが、大勢集まってミューミューミュー。
にゅうしちゃんにあなをあけて、むしばちゃんにしてしまいます。
そうならないように、はぶらしちゃんでやさしくみがいてあげましょう。
おーちゃんが大きくなるにつれ、にゅうしちゃんのきょうだいはどんどん増えます。
せっしちゃん、けんしちゃん、きゅうしちゃん。
6カ月頃から3歳頃までに、上、下、前、奥、全員そろうと20人。
「中切歯」「第二臼歯」という単語が並んでいてもあまりピンと来ませんが、「ちゅうせっしちゃん」「だいにきゅうしちゃん」という名前で、ぐんと身近なお友達に感じられます。
スタイやケープを身にまとって整列している姿に、ハートをいぬかれること間違いなし。
すみからすみまで愛らしさいっぱい、「かわいい♪」「かわいい♡」とページをめくっている内に、それぞれの歯の形や役割が、いつの間にか頭に入ります。
これはきっと、大人よりも子どもの方が、
「けんしちゃんは4にん」
「上のきゅうしちゃんのあしは3ぼん」
など、細かいところまでよく覚える気がしますよ。
作者のminchi(みんち)さんは、画家兼イラストレーター。
一歳半の子どもの、おかしくも愛しい、あるあるな行動を描いた『いっさいはん』(岩崎書店)で絵本デビュー。
子育て世代に大反響を呼び、第10回MOE絵本屋さん大賞2017では第2位に輝きました。
作者が大好きなモチーフ、乳歯を存分に描いた『にゅうしちゃん』に続いて、かわいいぬいぐるで歯みがきの練習ができる『あそべるぬいぐるみ にゅうしちゃんとはぶらしちゃん』(岩崎書店)も発売中。
また、歯と口の健康週間にちなんで、現在書店店頭では「にゅうしちゃんフェア」が開催中です。フェア開催店では、minchiさん特製「はみがきカレンダー/はえかわりカレンダー」がもらえるので、お見逃しなく!
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。