2019年1月22日

『きょうのおやつは』【今日の絵本だより 第29回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『きょうのおやつは』
わたなべちなつ/作 福音館書店 本体1500円+税

1/25は、ホットケーキの日。
日本の最低気温を観測した日にちなんで、「寒い日にはホットケーキを食べて温まってもらおう」と制定されたそうです。
おいしそうなホットケーキが出てくる絵本はたくさんありますが、中でも今回は驚きのつまったこの1冊、『きょうのおやつは』をご紹介します。

『きょうのおやつは』のサブタイトルは、「かがみのえほん」。
ページが鏡のように映る紙でできています。
読み方もユニークで、まず背表紙が向こう側になるような向きで置いて、ページ同士が直角に向き合うように開きます。
「おやつの したくを はじめよう」と、ボウルに卵を割り入れると、ひとつしか描かれていない卵が、奥の鏡のページに映りこんでふたつに。
フライパンから、空中にたちのぼる湯気。
お皿とお茶の支度も、鏡のマジックでふたり分に。
表紙からお話に寄りそうネコのクロと一緒に、「それでは みんなで いただきまーす!」とテーブルに向かうと、つくりたてのほかほかのホットケーキを目の前にした、あったかい気持ちになります。
割り入れる卵や、シロップの容器の取っ手に読み手の手を添えると、ホットケーキづくりの臨場感がより味わえますよ。
百聞は一見にしかず、ぜひ手に取って、興奮を味わってください。

……と、こんな風に面白そうな絵本を見つけて、せっかく読もうとしても、まだ小さい子だとパタンと閉じられてしまったり、ページを勝手にめくられたり。あると思います。
でも、「あ、うちの子、絵本に興味ないんだ」と、あきらめないでくださいね。
それが今のその子にできる、その子なりの絵本へのリアクション。
しばらくしたら、じっと聞けるかもしれない。
いつか自分の手で上手にページを開いて、ひとりで読めるかもしれない。
今はまだ発展途上、そんな風に未来を楽しみにできるのも、親子の読み聞かせのいいところ。
きちんと聞けたか、読めたかを気にするよりも、『きょうのおやつは』のような絵本も手に取りながら、「絵本を開くと、楽しい何かが待っている」ことを繰り返し伝えてあげると、自然と本と仲よしになれると思います。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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