2018年11月23日

『ペロのおしごと』【今日の絵本だより 第17回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ペロのおしごと』
樋勝朋巳/作 小学館 本体1400円+税

11月23日は、勤労感謝の日。
それにちなんで、ちょっとユニークなお仕事の絵本、『ペロのおしごと』をご紹介します。

自分の飼い主のおかあさんのことが、好きで好きでたまらないペロ。
おかあさんがいつもアクセサリーショップで「すてきね…」と眺めているネックレスを、買ってあげたいと思っています。
ペロは毎日毎日考えて、
「ついに けっしんの ひが やってきました」。
2本の足ですっくと立ち、腰に赤いベルトをキュッとしめ、青い首輪をぱっとはずします。
ネックレスを買うために、お仕事を探しに行くのです。

はじめに向かったのは、ご近所の整骨院。
マッサージのお仕事ができると思ったのですが、そこではすでに、おさるちゃんがお手伝いをしていました。
次に向かったのは、郵便局。
切手をぺろっとなめるお仕事ならできると思ったのですが、べろから切手がなかなか取れず、とても時間がかかってしまいます。
サーカス団、レストラン、いろんなお仕事を転々としますが、どれもうまく行きません。
「おせわになりました」
うなだれながらも、いつも礼儀正しいペロ。
考えていたお仕事のあてはすべてなくなり、ひとり、ゆらゆらと歩きます。
そして、いつのまにか海辺にたどり着き……。

器用ではないけれどまっすぐなペロは、とてもいたいけで、愛らしく。
「効率」とか「自己実現」とか、今どき仕事にまつわる言葉はいろいろありますが、
「大好きな人が喜ぶものを、買ってあげたい」というペロのひたむきな気持ち、
その熱い思いに、はっとさせられます。
「ぴったりのお仕事がみつかりました」ではないゴールは、仕事第一主義の人こそ、
読んでみてほしい。
もちろん、そんな深読みをしなくても、親子で読んで充分楽しい作品です。

作者は『きょうはマラカスのひ』(福音館書店)にはじまる「クネクネさん」シリーズでもファンの多い、樋勝朋巳さん。
樋勝さんの描くお話は、いつもあちこちユーモラスで、ちょっと切なくて、出てくるみんなが優しい。
そして読んだ後は、なんだか心が温かくなるのです。
裏表紙のペロとお母さんの姿も、見逃さないでくださいね。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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