2018年11月8日

『おおきくなったの』【今日の絵本だより 第14回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『おおきくなったの』
すとうあさえ/文 つがねちかこ/絵 ほるぷ出版 本体950円+税

もうすぐ七五三。
これからお詣りなのか、町に晴れ着のかわいい子を見かけると、なんだかうれしくなりますね。
ほんの通りすがりでも、幸せのおすそわけ。
眼福ですね。

発売中のkodomoe12月号連載「季節の絵本ノート」では、七五三の本を計5冊掲載していますが、今回はこの中から1冊、『おおきくなったの』をご紹介します。

ねずみちゃん、うさぎくん、まあちゃん。
ねんねの赤ちゃんの頃から、みんな一緒のお友だち。
ミルクをいっぱいのんで、いっぱい泣いて、
いっぱいだっこされて。
ごはんをたくさんたべて、こんなに大きくなったの。

3歳になったみんなは、今日はとびきりおめかししておでかけ。
「わたしたち、3さいの おいわいに いくの。」

晴れ着で並んだ3人のにっこり笑顔に、
「みんな赤ちゃんだったのに、大きくなったねえ、よかったねえ」と
昔からの知り合いのように、うれしくなってしまいます。

でも、実際の「うちの七五三」の場合、ママは大忙しではないですか?
子どもは和装? 洋装? レンタル?
撮影は当日? それとも前撮り? 後撮り?
食事は? 移動は? お客様は?
私は行事にあたふたする方なので、あの気忙しさを思い出すだけでも、なんだかきゅーっとなってきます。
ですが、『おおきくなったの』を読んで
「そっか、七五三って、子どもが大きくなったことを、純粋に喜べばいいんだ」
と、目からウロコが落ちました(今さら)。

幼い子がすくすく育つことが当たり前ではなかった時代、
「ここまで無事に大きくなりました」と、
氏神様にお詣りして感謝することから、はじまった七五三。
医療が発達した現在でも、新しい命が誕生して、元気に成長し、
家族でつつがなく毎日を過ごせるのは、本当は奇跡のようなこと。
そんなありがたさに、ひとときの間、思いをはせて。

『おおきくなったの』の最後の言葉がまた、シンプルだけど素敵なんです。
「わたしたち、もっと おおきくなるの。」

七五三のお祝いに、お子さん、お孫さんへのプレゼントにも、おすすめの作品です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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