2023年1月1日

あけましておめでとう! 年始に読み聞かせしたい絵本3冊をご紹介

ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめする「今日の絵本だより」。過去にwebでご紹介した絵本の中から、年始に読みたい絵本を3冊ご紹介します!

 おもちのきもち

あけましておめでとう! 年始に読み聞かせしたい絵本3冊をご紹介の画像1『おもちのきもち』
かがくいひろし/作
講談社 本体1650円

1月11日は、鏡開き。
関西などの地域ではもう少し先、15日か20日に行う場合もあるようですね。
今回は鏡開きにちなんで、なんとかがみもちが主人公のこの一冊、『おもちのきもち』をご紹介します。

表紙から何やら困り顔で、腕組みしているかがみもち。
たごさくさんちのかがみもちです。
おもちつきで生まれた時から、きねとうすでペッタンペッタン、何度も頭を叩かれて。
きょうだいたちはのし棒でのばされたり、小さくちぎられたり、それはもう散々な目に。
その上、あんこやきなこをつけられて、はたまた納豆でねばねばになって、ペロリと食べられてしまうのです。
かがみもちだって、今はこうして大事に床の間に飾られていますが、
「いつ なんどき たべられる ことやら。ああ おそろしや。」

そこで、かがみもちは心を決めました。
「この たび にげだす ことにいたしました〜。」
さあ、床の間から家の外へ抜け出して、おもちは全力疾走。
どうやって?
それはもう、ぜひ絵本をご覧ください。
ペッタンペッタン、ビロンビロンビローン。
擬音も走る姿も、なんとも愉快で大笑い。
この絵本を一度読めばもう、かがみもちを見る目が変わっちゃいますよ。
鏡開きの前にはきっと、「あんなふうに逃げちゃうかな?」と、思い出し笑い。

『おもちのきもち』は、『だるまさんが』(ブロンズ新社)などで大人気のかがくいひろしさんが、50歳の時のデビュー作です。
長い間、特別支援学校の先生をしていたかがくいさん。
どの作品にも、子どもたちを喜ばせたい、笑顔になってほしいという思いがあふれているようで、笑った後にはほっこりと、温かい気持ちが残るのです。

たこあげ

あけましておめでとう! 年始に読み聞かせしたい絵本3冊をご紹介の画像2『たこあげ』
青山友美/作
講談社 本体1540円

寒風の吹くこの時期ならではの遊びといえば、たこあげ。
このお正月にたこあげを楽しんだ方は、いらっしゃるでしょうか。
「立春の季に空に向くは、養生のひとつ」という言い伝えから、旧暦では立春から始まった新年にあわせて、現在の新年の始まり、お正月にたこあげを楽しむようになったとも言われています。
今回ご紹介する絵本は、『たこあげ』です。

商店街の魚屋の男の子、てっちゃんが、
「とーちゃん、たこあげ しに いってくるー」
と、たこを手に元気に飛び出しました。
駆けていくてっちゃんを見て、同じ商店街の八百屋のれんくん、お茶屋のゆきちゃん、味噌屋のたいちゃんも、
「どこ いくのー?」
「ぼくも いれてー」
と、自分のたこを持って走り出しました。
商店街を抜ければ、そこはもう海。
さあ、みんな糸を繰り出して、力いっぱい走ります。
みんなのたこは海風を受けて、青い空の中、どんどん高く、ぐんぐんあがっていきます。
でもてっちゃんのたこには、実はてっちゃんも知らない秘密が……。

てっちゃんの握った糸の先、空のはるか彼方で、こんなことが起きているとは。
驚きのできごとは、ぜひ絵本を開いてお確かめください。
この連載ではよく「裏表紙まで見るのをお忘れなく」と言っていますが、『たこあげ』では裏表紙はもちろん、表紙をあけてすぐの前見返し、裏表紙のひとつ手前の後ろ見返しも、見比べてみてくださいね。
「なーるほど!」と、ニヤニヤしちゃいますよ。
そして商店街のあちこちにも、いろんな発見があって繰り返し楽しめるのです。

たこあげは未体験の方も多い遊びかもしれませんが、体力や技がなくても、よい風に乗れば楽しめるのがいいところ。
空を飛ぶものと自分の手がつながっているあの不思議な、でも確かな感覚、てっちゃんたちが夢中になるのもうなずけます。
親子で一緒に遊べる内に、ぜひ一度たこあげ体験、おすすめです。

おむすびころりん
はっけよい!

あけましておめでとう! 年始に読み聞かせしたい絵本3冊をご紹介の画像3『おむすびころりん はっけよい!』
森くま堂/作 ひろかわさえこ/絵
偕成社 1540円

1月17日は、おむすびの日。
1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災で、ボランティアによるおむすびの炊き出しが人々を助けたことから、その温かい心の象徴として記念日とされたそうです。
(ちなみに「おにぎりの日」はまた別にあって、6月18日なのだとか。)
今回はおむすびが主役のお話、『おむすびころりん はっけよい!』をご紹介します。

さんかくおむすびと、まんまるおむすびの国。
隣り合うふたつの国は、いつもいがみあっておりました。
さんかくおむすびのとのさまが
「みなのものー。ふじの おやまも さんかくじゃ。
 さんかくほど うつくしいかたちが
 このよに またと ござろうか?」
と呼びかければ、さんかくおむすびたちは、三角の扇子をふって大喜び。
まんまるおむすびのとのさまが
「みなのしゅう。
 おてんとさまかて まんまるや。
 まんまるが いちばん えらい。」
と言えば、まんまるおむすびたちは、丸いうちわをふってもりあがります。

そんなある日、ふたつの国の間の畑をめぐって、とうとう争いが勃発。
さんかくとのさまとまんまるとのさまが、相撲で勝負することになりました。
まわしをしめたふたりのとのさまが土俵に上がり、行司のしゃもじが、
「はっけよ~い」……「のこったー!」
がっぷり四つに組んでの大一番、さあ、軍配の行方はいかに?

お話に登場するおむすびは、総勢400個以上。
うめぼし、天むす、おかかにシャケ、みんなみんないきいき元気で、おいしそう。
昔話のように安心できる味わいで、ほっと満足の読後感。
そして何よりおむすびが食べたくなること、間違いなしの一冊です。

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選書・文
原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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