ヨシタケシンスケさんインタビュー。「発想力」が鍛えられる親子の会話とは?
いろんなものの見方や考え方があることを教えてくれたり、好奇心や想像力を高めてくれたり……。これからの時代を生きていく上で「発想力」を育むことは大切です。
今回は、発想えほんの第一人者、ヨシタケシンスケさんにインタビュー。ヨシタケシンスケさんが、お子さんとの会話の中でおこなっている発想力の鍛え方とは?
発想えほんの第一人者、
ヨシタケシンスケさんにインタビュー
発想力は毎日の中で
楽しく鍛えられる
僕は小さい頃からいろいろと悩んだり苦しんだり、今でも迷いを引きずっています。そこから自由になるために、「こういう考え方もできるよ」と子どもの頃の自分に教えてあげたいというところから、こうした絵本ができています。逆に昔の僕には、発想力はなかったんです。今でもすぐに「ああ、もうダメだ」となってしまうからこそ、「いやいやいや、頑張れ頑張れ、オレ」と、自分を励ますために発想力を鍛えているわけで(笑)。
逆に言うと、筋力と同じで、鍛えれば誰にでもある程度の発想力はつけられると思います。頭の使い方は、すなわち体の器官の使い方なのであって、体の使い方という以上は、練習すればある程度はできるようになるはずで。いきなり「明日フルマラソンを走れ」と言われても無理だけど、世の中には42キロ走れる人もいて、その人たちは何をしているかというと、毎日ちょっとずつ走っているわけですよね。発想力も、毎日面白いことを考えれば鍛えられる。日々の練習ですよね。
うちでは子どもたちとよく、プチ大喜利みたいなことをします。
新聞に面白い写真があったら「この人、なんて言ってると思う?」とか、町で見た銅像にセリフをつけるとか。ものごとにどんどんツッコミを入れていくというか、そういうちょっとしたジャブみたいなことを続けると、言われたことに対して答えを自分の中で組み立てる練習になる。それを自分で楽しめたらしめたもので、それはきっといろんなことに共通して役立つはずなんですね。こんなときはこういうアプローチでやってみたらどうか、と。面白い方向に考えていくことの面白さ、ですよね。
親子の会話の中で、そういうちょっとしたお題を出していく。子どもは上手なんですよ。最初のシステムだけを投げると、大人よりもよっぽど「そう来たか」という答えを返してきます。「このりんご、何に見える?」でもいいし、「なんであの人、あんな髪型になっちゃったんだと思う?」とか、そういうやりとりの中で、発想力が鍛えられるのではないでしょうか。
要はスイッチの押し方ですよね。子どもはスイッチが入ったら強いですが、大人側のきっかけで入ることの方が断然多いはずなので、そこは大人の方から結構しかけていっていいのでは、と思います。
ヨシタケシンスケさん
絵本作家・イラストレーター。1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科修了。絵本デビューから7年の間に、MOE絵本屋さん大賞第1位を6回受賞。
撮影/岡森大輔 スタイリング/山田祐子 ヘアメイク/山田ナオミ モデル/サハラ・アンナちゃん ゴーニ・ヒロくん ウィティカー・ミリーちゃん 編集協力/原陽子(kodomoe2018年10月号掲載)