その子の言葉を育てる、絵本を読みながらの対話――言語聴覚士・絵本専門士 圓山哲哉さん
2020年2月27日

その子の言葉を育てる、絵本を読みながらの対話――言語聴覚士・絵本専門士 圓山哲哉さん

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子どもに絵本を読んでいると、思わぬところで絵本のセリフの真似をしたりと、子どもたちの「言葉」がぐんと育っていくのを感じる瞬間があります。滅多に話さなかった子が、あるとき、急に絵本のフレーズを語り始めた……ということもよくある話です。言語聴覚士であり、絵本専門士でもある圓山哲哉さんに、言葉の発達の分野から見たおすすめの絵本について、紹介していただきました。

その子の言葉を育てる、絵本を読みながらの対話――言語聴覚士・絵本専門士 圓山哲哉さんの画像1圓山哲哉/まるやまてつや  言語聴覚士・絵本専門士
療育センター勤務の言語聴覚士として、発達に遅れや偏りのあるお子さんの言語・コミュニケーション・食べることに関する支援に携わる。また、国立青少年教育振興機構が創設した絵本に関する資格「絵本専門士」を取得し、絵本を通した豊かな経験の素晴らしさを伝えるため、おはなし会やワークショップ、講習会を行うなど活動の幅を広げている。

 

 絵本を通したやりとりで言葉に「アプローチ」していく

うちの子はなかなか言葉が出てこない……と心配される親御さんは多くいらっしゃいますが、言葉の発達というのは、段階が細かく分かれていて、急に言葉を理解して、話せるようになるわけではないんです。例えば、まず最初に大人の話す言葉に興味を持ち、ものに名前があることを知ったら、その名前を聞いて実物を指させるようになり、写真やシンボル化された絵でも指させるようになり……といったように、ステップアップしていきます。そのステップアップが早い子もいれば、ゆっくりの子もいるので、ぼくは言語聴覚士として、絵本や絵カード、様々な玩具、自作教材、ジェスチャー・サインなど、いろいろな方法を通して、そのお手伝いをさせていただいています。

言葉を育てるのに、絵本はとてもいいアプローチだと実感しています。例えば、黄色のカードをみて、”きいろ”という色の名前を覚えるだけでは、おもしろみに欠けますし、黄色という色彩のもつイメージや概念を理解することは難しいですよね。絵本は身近にあるものや、お子さんたちの好きなものが素材になっていますし、物語性もありますし、何より読んでくれる大人との対話が生まれやすいツールです。絵本を通した「好き」「やりたい」「なぜ?」という心の動きが、発語のモチベーションにつながることも多いです。絵本をただ一方的に読み聞かせるというだけではなくて、絵本を通した大人とのやりとりの中で、言葉に興味を持っていってくれるのが理想です。

子どもの個性に合わせて読み方を変えてみよう

ぼくは、絵本作家さんの世界観を壊したくないという思いもあるのですが、その一方で、特に親子での読み聞かせの場合、最初から最後まで一字一句を読み聞かせることが必ずしもいいと思っていません。お子さんの発達段階や反応に合わせて調整していけるのが、絵本の良さでもあります。

絵本に興味を持って集中して聞くことができるのであれば、もちろん原文を大切にして、そのまま読み聞かせを行いますが、例えば、必要に応じて「LLブック(読みが苦手な人にもわかりやすい言葉や絵を使った本)」のようにわかりやすい表現に言い換えたり、ときには同じページをずっと読んだり、場合によっては前のページに戻ったり、途中でクイズを出してみたり、物語からちょっと脱線してしまうことがあってもかまわないのではないでしょうか。

その子にとって何が楽しいのかを試しながら読んでいくことで、「もっと絵本を読みたい」「言葉っておもしろい」という感覚がついてくると考えています。
その子の言葉を育てる、絵本を読みながらの対話――言語聴覚士・絵本専門士 圓山哲哉さんの画像2

絵本の読み聞かせというと、つい物語を選びがちなんですが、たとえば自閉症スペクトラムの子は、図鑑が好きな子も多いです。必ずしも、本の全部を読まなくてはいけないわけではありませんから、親御さんも一緒に図鑑を楽しんで語りかけていただければと思います。「おもしろい名前だね」「ここは青いんだね」「これ連結するんだって!」と、お子さんが気になっている一部に注目してもいいですよね。

電車の本しか読まない子がいるなら、その子にとって、まだその本から学べること・得られることが多いのでしょう。安心感もそのひとつかもしれません。絵本のページをどんどんめくってしまうという子も、いまは「めくる」という行為が楽しい段階なので、満足できるまでめくらせてあげてください。そのうち、そこにしかけ絵本を加えてあげると、めくったときまた違う反応を示してくれるかもしれません。

もちろん、毎日絵本を読むのはしんどいときもありますが、大人でもおもしろい! と思える絵本や図鑑もあります。ぼくは、普段は面と向かって言いにくい「きみのことが大好きだよ!」という言葉や、かわいくて楽しいオノマトペ(擬音語や擬態語)での表現、美しい日本語での表現を、絵本作家さんたちの言葉を借りて口にしています。ぜひお子さんと対話しながら、一緒に絵本を楽しんでみてください。

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