2018年12月12日

連載【第21回】今日の絵本だより『漢字はうたう』

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kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、
ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめして
いきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『漢字はうたう』
杉本深由起/詩 吉田尚令/絵 あかね書房 本体1300円+税

 12月12日は、漢字の日。
「いい字1字」の語呂合わせからこの日に制定されたそうです。
京都の清水寺で「今年の漢字」が発表されるニュースに、
年の瀬を感じる人も多いのではないでしょうか。

漢字といえば、今年の春に発売された、素敵な絵本があります。
『漢字はうたう』。
漢字の詩が18編収録された絵本です。
最初の詩は、こんなふう。

「漢字の子どもが
あいにきた
ベレーのぼうし かぶってさ」
……わあ、本当だ!
「字」という漢字、よく見たら、子どもがウかんむりの
べレー帽をかぶってる!!

「傘という字は
あたたかい」
その理由に、なるほど!
この年になって、傘という漢字1字にこんなに感動する日が
来るとは思いませんでした。

それから、「生」。
「生は
くさのめが 土のなかから
かおをだす かたち なんだって
では くさのめの よこの
ノは なにかしら」
……なんだと思いますか?
もう、その答が素晴らしくて。
これから生の字の1画目を書くたびに、毎回心が躍りそうです。

他にも、草、天、本、白……。
1年生で習うやさしい漢字にも、1字の中にこんなに豊かな物語がかくれている。
学校にあがってから、「漢字ってめんどくさい」、「詩ってちょっとわからない」、
そんな風に思ってしまう前に、この本と出会っていると、きっとずいぶん違うはず。
漢字も詩も、もっと気軽な遊び友達になれると思います。

ひとつひとつの詩をよむごとに、今までにない漢字のイメージが
ふわっとここちよく心に広がるのは、きっとこれが文字だけの本ではなく、
絵本だから。
温かく明るい言葉の世界に、手をつないで連れて行ってくれるような、
吉田尚令さんの絵が素敵なんです。
作者の杉本深由起さんによる巻末のあとがきと、それぞれの詩の解説も、
柔らかく胸にしみてきます。

漢字の本ですが、すべてルビがふってあるので、入学のお祝いにもおすすめ。
子どもが文字を追ってこの詩を音読していたら、
優しい言葉の響きに、聞いている側もじーんと来そうです。

うちでは子どもよりも、私が自分一人で、折にふれて開く予感がします。
子どもだった頃の、新しい漢字にわくわくする気持ち、
本を開くことへの素直な喜びも、思い出させてくれるようで。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

 

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