心理学者の杉山崇さんが提案! 夫へのイライラ撃退法
2020年5月25日

心理学者の杉山崇さんが提案! 夫へのイライラ撃退法

外出自粛中の今、せっかくの週末も家にこもりっきり、仕事もリモートワークという人も多いことでしょう。そんな「家族みんながずっと一緒にいる」という状況に、ストレスが溜まっているママは必見! そのイライラの正体と、今日から実践できる対処法を、心理学者の杉山崇さんに教えていただきました。

イライラのスパイラルは人の本能だった!?

家事や育児を手伝ってほしいのに自分のことばかり、食べたり脱いだりしたものを散らかしっぱなし……。コロナ禍で家に一緒にいる時間がぐんと増えたパパに、イライラを募らせているママが増えています。「コロナ離婚」なんて言葉もチラホラ耳にする今、そうならないためにはどうしたら? 

「夫や子どもは自分(ママ)とは別の人間 ── 当たり前のことですが、いつの間にか『家族なんだから同じ考え、同じ感じ方であるはず』と思ってしまっている人は、意外と多いのではないでしょうか? 

家族は、社会心理学では『拡張自己』と言われ、『自分の延長である』ととらえる人が多い。自分の一部のはずなのに自分と同じじゃない、自分の思い通りにいかない、というジレンマが、家族に対するイライラの正体です」と杉山さん。

「家の中で一緒に過ごす時間が増えると、今まで以上に相手のさまざまな面が見えてきます。今までも一緒にいる時間が長かった子どもと比べて、離れている時間があった夫のほうが、その言動がより目につきやすいため、夫の自分とは異なる言動ひとつひとつにイライラが蓄積されていってしまう。いったんそうなると、気に入らないところばかりが目につくようになってきます。

人間の視野はとても狭く、自分の興味のあるものしか見えません。夫の言動にイライラしているときは、明らかに『視野狭窄』が起きていて、視野が狭まっている状態です。興味といってもこの場合はプラスの興味ではなく、マイナスの興味ですが、イヤだと思えば思うほど目がいってしまい、さらにそのイヤな気持ちがくり返し湧き上がってくる。この反芻(はんすう)を『ルミネーション』と言いますが、相手のイヤなところばかり思い浮かべたいわけではないのに意図せずそうなってしまう、というのがママ自身をも苦しめているのです。

でも『自分は心の狭い人間だ』と思わないで! みんなそうなので安心してください。

その理由は、人間の感情の誕生にあります。太古の人間は厳しい環境で生き抜いていくために、危険やリスクに敏感でした。危険やリスクに対する『恐怖』という感情が、人間の感情の原点であり、そこからさまざまな感情が発展していくのです。だから、イヤなことをくり返し思い出したり思い浮かべるのは、人間に備わったリスク回避システムなんですね」

心理学者の杉山崇さんが提案! 夫へのイライラ撃退法の画像1

「ヒトの脳」を活性化させるとイライラが減る!

家族は自分とは違う人間、イヤなところばかり目につくのは人の本能 ── まずはこうしたイライラの正体を知ると、少し客観的になってささくれた気持ちが落ち着きます。その上で、よりラクになれる方法を杉山さんが教えてくれました。

「人間の脳は、実は4つの種類の脳がひとつになっています。①生命維持のための本能的な働きをつかさどる通称『ワニの脳』、②怒りや喜び、愛情などの衝動的な感情を担う通称『ウマの脳』、③自分の立場を気にする通称『サルの脳』、④人間らしく理性的で論理的な思考をする通称『ヒトの脳』。この4つです。

夫にイライラするというのはウマの脳が活性化している状態。ウマの脳を落ち着かせるには、ヒトの脳を活性化させることが効果的です。周りの人に共感してもらえるとヒトの脳が活性化すると言われているので、夫のグチなどはため込まずに、気のおけないママ友などに話を聞いてもらうのがおすすめですよ。

また、例えば夫のある行動にイラッとしたとき、「●●ってイヤだな、感じた・・」というように、「と感じた」「と考えた」と心の中で言葉を付け足してみるのもおすすめ。感じる、考えるというのはヒトの脳の仕事なので、これを習慣づけるとヒトの脳が活性化して、イライラの発生源であるウマの脳が落ち着いていきます。

そしてもうひとつは、『あきらめる』こと。この言葉には途中で物事を投げ出すようなネガティブなイメージがありますが、ここで言う『あきらめる』は『納得した上で考えるのをやめること』。あきらめることで、イヤなことをくり返し思い起こす状態(ルミネーション)から自由になることができる。要は気にしない、ってことです。

相手(夫)を変えようと思っても、なかなかままなりません。まずは自分の心の状態を自覚して、少し考え方をスイッチするだけで、だいぶラクになるはずですよ」

次回は、テレビを見続けてしまったり、ゲームをやめられなかったりする子どもたちに、ママができる必殺技をお伝えします!

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杉山崇さん
すぎやまたかし/心理学者。臨床心理士。神奈川大学教授。著書に『心理学者・脳科学者が子育てでしていること、していないこと』(主婦の友社)ほか。中学生と4歳の子どものパパ。

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